──食品以外ではどうでしょう?
まず医療では混合診療の問題が出てきます。今は保険診療していて、ここは保険で、ここは保険が効かないということはできません。例えばガンの治療で、日本ではまだ保険の適用になってない最新の治療方法があって、それをやる場合には、全額保険適用外の患者10割負担の自由診療となるんです。
──TPP参加で混合診療となるとどうなりますか?
患者にしてみれば、最新の治療だって保険が効く範囲であれば受けたいわけですよね。これが混合診療ならそんなにお金持ちでなくても高度な医療を受けられる可能性は高まるわけです。ただし、TPP交渉の中で万が一、国民皆健康保険制度が揺らぐようなことがあれば、それは反対していかなければいけません。今回の鳥インフルエンザを見ても、中国の健康保険制度よりずっと日本のほうがいいのはわかりますよね。
──ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)が問題だという人もいます。
これは確かにいちばん心配です。つまり「相手の国はフェアでないことをやっているよ」と裁判に訴えることができるようになります。これは気をつけないといけない。日本国内で作ったものがアメリカではダメだと言われる可能性がある。でも、これだって日本が海外の国に対して日本の裁判所に訴えることができるという面もあるわけです。
──こうして見るとTPPは諸刃の剣ですね。
えぇ、でもね、日本人というのは被害者意識があって、国際的なルールになったらアメリカからいろんなことを要求されて大変だと大騒ぎするけど、日本にとっても国際的なルールにのっとって、TPP参加国に経済進出しやすくなるということも事実なんです。
──退路がないなら切り開く発想が必要ですね。
昔、牛肉・オレンジの自由化で大騒ぎしたことを覚えてますか。それまでは日本のオレンジジュースには必ず国産みかんを混ぜないと販売できなかった。ところが自由化でようやく日本でも甘い100%オレンジジュースが飲めるようになったんですよ。牛肉だって昔はすきやきなんて一年に何回かハレの日にしか食卓に上らなかった。私も社会人になって初めてしゃぶしゃぶを食べて、こんなにおいしいものがあるんだと思ったことがありました。
──今では普通ですけどね。
それも牛肉が自由化されたからなんです。確かに日本の肉牛農家は減ったけど、世界に通用するおいしい神戸牛や松阪牛など和牛の知名度は上がった。みかんだって激しい競争の中でぽんかん、でこぽんとか次々に新しい品種が開発されました。つまりあの時、大騒ぎして、確かに消えていった農家はあったけど、国際競争力が強い農家も出てきたということなんです。今回のTPPでもこれをチャンスと考えている農家もいるはずです。
──プラスに考えることが大切なんですね。次回は、今後の安倍政権について教えてください。
はい、わかりました。