しかし、そうは簡単にコトが進まない大問題があるんですよ。
──ひょっとして安倍総理に女性スキャンダルでも?
ハッハ。残念ながら違います。実は、昨年の衆院選について「一票の格差」を巡る問題で訴訟が起こされ、全国の裁判所で違憲判決が出ていることはご存じですよね。この違憲状態を早く解消しないと、例えばこのあと憲法96条を変えようとした時に、憲法違反の区割りで選ばれた今の衆議院議員は憲法違反の存在である。したがって、その議員が憲法を変えるのはおかしいゾという話になってしまうわけですよ。
──憲法違反の存在だということは、当選自体が無効ということですか?
そうですね。広島と岡山の高裁では無効だという判決になっています。もちろん最終的には最高裁での判断となりますが、違憲判決の出た広島1区の岸田文雄外相はこのまま行けば失職してしまう可能性もあるわけです。
──それで、慌てて「0増5減」などと、帳尻合わせの法案を通したわけですね。
そう、でもそれにしたって、2010年の人口比で計算した区割りでやっと2倍をギリギリ下回る1.998倍まで縮小させたわけですが、今現在の人口比で計算すると、実は2倍を超えてしまうという試算もあるんですよ。
──明らかにその場しのぎですね。選挙制度を変える必要があるのでは?
小選挙区の定数を変えるだけではなく区割りまでをも変える必要があるということですね。今のままでは参議院選挙までも憲法違反になる可能性があって、衆院選で「一票の格差是正」を求めている弁護団が、今度は参議院選挙が終わった翌日に一斉に全国47の都道府県で提訴する構えです。
──それは自民党にとっては頭の痛い問題ですね。
そうするとね、小選挙区では選挙違反ですけど比例代表では一票の格差はないわけでしょ。だから参議院の場合、全国区は合憲で小選挙区は全部憲法違反になる可能性があるわけですよ。つまりそうなったら、なんと議員定数の削減が一挙にできてしまう、ということになるかも(笑)。
──そうなったら、ムダがすごく省けるのですがね。
それはともかく、せっかく3分の2を獲得して96条を変えようとしても、その前に選挙区制度や、区割りを変えて憲法違反でない状態で選挙をしなさいという話になるわけですよ。でも自民党には、それを解消するための奥の手、ウルトラCがあるんです。
──それはひょっとして‥‥。
そう、参議院選挙と一緒に衆院選をやってしまって「0増5減」を早々に実現してしまう、つまりW選挙をやれば当面の憲法違反状態は解消するわけで、96条にもすぐに手がつけられるわけです。
──W選挙ですか! 今の自民党なら圧勝できそうですね。
ええ、これで一挙に違憲状態を解消し、そして憲法改正へという流れが十分に考えられるわけです。