一部大企業では「春闘賃上げ」など徐々に効果を発揮し始めているアベノミクス。誰もがその恩恵にあやかりたいところ‥‥。その一方、庶民の生活には物価高、増税、サラリーマン首切り法など、振り向けば黒い影がヒタヒタと忍び寄っている。大好評、池上彰スペシャルの後編は、いよいよ2カ月後に迫った参院選と選挙後の状況について熱血講義する!
──GW連休が終わると、はや7月の参院選挙まで残り2カ月余り。前回は庶民生活に関わるTPPについてうかがいましたが、今回はアベノミクス効果が功を奏している安倍政権の本音について教えてください。
はい、わかりました。確かに株価は上がり、円安も進み、まさに絶好調ですからね。このままなら参議院選挙での自民党の圧勝も間違いないところでしょう。
──反対に、民主党は消滅してしまうのではないかという声も出ています。
そんな勢いですね。今の段階で、参議院選挙で自民党が圧勝して過半数を取り、ねじれ国会が解消するというのはもう間違いないでしょうね。ただ、それでも自民党が目標とする3分の2の議席数までいくかというと、それはちょっと無理じゃないかと言われています。自民党と公明党の連立でも3分の2は厳しいかもしれません。
──しかし、衆参のねじれが解消すれば、いよいよ“タカ派”安倍内閣の本性が見えてくる?
そうですね、当然いろんな法律をどんどん通そうとするでしょう。そして、その第一手が憲法96条の改正になるわけです。
──憲法9条の改正ではないのですか?
はい、ご説明いたしましょう。確かに安倍総理は最終的に憲法9条の改正を目指していますが、それには、衆参両院で3分の2以上の国会議員の賛成を得て発議し、国民投票を行う必要があります。その手続きを定めているのが憲法96条なんです。改正の発議に両院の国会議員の賛成3分の2以上とするところを2分の1へとハードルを引き下げようというわけです。これについては、維新の会もみんなの党も賛成だと言っています。そうすると、参院選で維新の会とみんなの党が躍進し、公明党が96条改正に慎重だったり消極的だったり、または賛成しないのであれば、自民党としては維新の会やみんなの党と連携を取り、3分の2を確保して96条を改正しようと動くでしょうね。
──民主も、自公連立さえも消え、まさに政界再編が起こるかもしれないということか‥‥。しかも自民党としては2段構えでいられるわけですね。
はい、もちろん憲法改正には、国民投票で有権者の過半数の賛成票を取る必要はありますが、96条さえ変えてしまえば、ねじれ解消後の自民党は衆参どちらでも過半数超ですから、他の党の賛成がなくても9条改正の発議ができるようになる。つまり96条を変え、それから9条を変えるために「国防軍」の必要性を国民に向けて説いてくる、という2段階になるわけです。
──安倍政権にとってはやりたい放題となるわけですね。