いわゆる「清純派」とお約束的な露出シーンが売りの「お色気派」。どちらのヒロインを支持するかは、個人の嗜好が分かれるところ。両極端なキャラのヒロインにはそれぞれに「セクシー」があった。
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まず、原作がアニメ化された清純派4作品。そのアニメ版にスポットを当てて分析してみよう。
「みゆき」(あだち充・作)は主人公の高校生・若松真人と2人の「みゆき」との三角関係を描いた青春ラブコメディ。アニメ評論家・夏晴彦氏が言う。
「第1話から、鹿島みゆきはテニスウエア、若松みゆきはビキニ姿でのサーフィンというセクシーさを見せてくれています。若松みゆきは究極の妹キャラクター。声優も当時、妹キャラアイドルとして人気だった荻野目洋子が演じて、リアルな存在感を出していました」
同じくあだち充氏原作の「タッチ」はというと、
「優等生タイプの浅倉南が、部活では新体操をしているというギャップが魅力です。南の新体操姿は肉体の動きや筋肉のつき方がリアルに表現され、それがさまざまなポーズで動くことで、原作よりセクシーポイントが高くなっています」(夏氏)
マンガよりアニメがエロ度増量となっている点は、「めぞん一刻」も同じだ。アパートの管理人として登場したうら若き未亡人が音無響子だった。
「響子はシンプルな服装ながらも巨乳。アニメではそれが立体的になり、しかも動きが加わって、セクシーさが半端ではありません」(夏氏)
テレビアニメより劇場版がスゴかったのが「銀河鉄道999」。謎の美女メーテルは‥‥。
「いつも黒い毛皮のコートを着ていますが、その中は素っ裸。全裸のシャワーシーンやビキニ姿も描かれます。劇場版のラスト、メーテルは鉄郎に別れの接吻をしますが、それはまさに恋人への熱い接吻でした。2人の関係に禁断のエロスを与えています」(夏氏)
エロティックな体温を感じさせるヒロインたちなのである。
対する「お色気派」について、マンガ評論家の上崎洋一氏はこう解説する。
「70年代からの永井豪の影響が大きかった。『ハレンチ学園』が『週刊少年ジャンプ』に連載され、エロの方向性を切り開いたんです」
その流れに乗ってまず出てきたのが「まいっちんぐマチコ先生」。学研の少年誌に連載されたことで、小中学生が手に取りやすかった。それが何百万部も売れた理由だ。
「皆さんが観念の中で回想するほどには『マチコ先生』に大したエロは描かれていない(笑)。基本はおっぱいモミモミですが、乳首も描かれていません。マチコ先生がすごいのは、子供たちからエロいことをされても『しょうがないわね~』と笑って受容するところですよ」(上崎氏)
81年から連載された「やるっきゃ騎士」(みやすのんき・作)は学園闘争モノで、これは「ハレンチ学園」の系譜につながる。
「女子と男子の対立。ヒロインの静香と主人公の豪介の2人は、本当は好きなのにいがみ合っている。裸になり、おっぱい出したり、お股おっ広げ状態にされたりしていますが、セックス描写は一切ありませんね」(上崎氏)
「みんなあげちゃう」の作者・弓月光氏は、もともと少女マンガ家だった。
「ヒロインの間宮悠乃はエッチに興味津々で積極的な女の子です。『anan』がセックス特集を組むハシリで、こういう女の子が受け入れられるようになりました。描写は過激になり、普通にセックスしています。話の後半は“不倫ピック”。悠乃が他の男とヤリまくる。これも斬新です。彼氏にいちずなんだけどビッチな“いちずビッチ”を描いているわけです」(上崎氏)
「ハート キャッチいずみちゃん」(遠山光・作)は、主人公・菊丸がむっつりスケベで、ヒロインの原田いずみは勝ち気な美少女。
「いずみちゃんは隙だらけでかわいい。そして意外とエッチ。2人は友達以上、恋人未満という状態です。話の後半には、いずみちゃんの股間に草履やソロバンを挟んだりして、フェティッシュな方向のナンセンスギャグになっています」(上崎氏)
年上の女性が少年にエッチな個人授業を施す「いけない!ルナ先生」(上村純子・作)は、少年誌としては過激なスケベ描写がウリだった。
「のちに『月刊少年マガジン』はコミック規制に巻き込まれてしまうんですが、そのマンガの一つが、これです。作品は絶版になりましたが、この問題が原因で打ち切りになった、という事実はありません」(上崎氏)
絵のタッチは80年代アニメブームを反映してアニメ調になっており、その後の90年代エロマンガの流れにも通じている。