国民栄誉賞を恩師とダブル受賞、そして華々しい引退セレモニー。かつて在籍した読売巨人による大イベントで、松井秀喜氏が久々に日本のファンの前に姿を見せた。だが、このオメデタイ行事はあくまで「ある野望」のために巨人がまいた餌。球団屈指のスターOBを指導者に仕立て上げるための「裏交渉」が仕組まれていたのである。
昨年12月27日、ニューヨークで開かれた松井秀喜氏(38)の現役引退会見。その瞬間から、巨人軍の最高権力者・渡辺恒雄球団会長(86)を首謀者とする「計画」は動きだしていた。
一発目の号砲は今年1月7日、渡辺会長の「次期監督」大放言である。
「原君のあとすぐっていうのがいないんだよ。松井君が最適だよね。早く巨人に戻ってきてもらって、多少はコーチとかやってもらうけど、大監督になってもらいたい。(日本に)帰ってきたら会うから。会って頼む」
原辰徳監督(54)が将来的に辞任した際の「後継者」に、引退したばかりの松井氏を独断指名したのだ。これは都内ホテルでの新年互礼会出席後のコメントだったこともあり、リップサービス的な意味合いもあるかと思われたが、
「いや、大真面目ですよ。原監督のあとには松井を据えるということが、読売内部の決定事項となっている。ある幹部は『松井に他球団に行かれたら恥だ。それだけは避けねばならない』と、強い口調で話していました。実は読売の本心は、原監督を降ろしたい。理由はもちろん、昨年の1億円愛人スキャンダルですね。もうほとぼりが冷めたとの見方もあるようですが、『早くお引き取り願いたい』との声が読売内部でいまだ根強いのは事実です。ところが、最適な『次の大物候補』がいない。渡辺会長は人気、収益、読売新聞の部数アップのためにも、とにかくスターである松井を抱き込みたい」(読売グループ関係者)
巨人のさる球団関係者も、内部の動きをこう明かす。
「最有力候補として落合博満氏(59)の名前があがり、渡辺会長も動いていたのは間違いないが、松井の引退表明直後から『落合氏の目は完全に消えた』との声が球団幹部から聞かれました。落合→松井へと切り替えたのです」
しかし、引退後の松井氏は夫人が出産間近というタイミングもあり(今年3月に長男誕生)、アメリカから帰国する気配はなし。渡辺会長は包囲網形成のための工作活動を開始した。
折しも松井氏引退会見直前の12月26日に自民党・安倍晋三総裁(58)が総理に就任。安倍総理は当初から「国民栄誉賞」を内閣支持率アップに使う考えを持っていたという。政治部デスクが説明する。
「渡辺会長は昵懇の間柄で、なおかつ松井と同じ石川県根上町(現・能美市)出身の森喜朗元総理(75)を通じ、安倍総理に松井の受賞を働きかけた。十分すぎる受賞資格を有しながら長らくタイミングを逃してきた巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(77)と、この機会に抱き合わせで、というプランでした。実は森氏も、松井受賞を安倍総理に強く推していたのです」