根尾昂内野手が近鉄バファローズの“いてまえ打線の極意”を習得しようとしている。
「中日の秋季キャンプはユニークな光景も見られます。序盤には伊東勤ヘッドコーチの進言で、地下足袋を履いての打撃練習が行われました。スパイクを履いていないため、下半身でしっかり踏ん張らないと強い打球が飛ばせません」(スポーツ紙記者)
伊東ヘッドによれば、これは、80年代の西武で行われていた練習法とのこと。「良いものは、どの球団でやっていたものであろうと、どんどんと取り入れる」と与田剛監督も語っていたが、根尾に施されたのは、旧近鉄式の練習だった。
「ファームでも、こっそり投げていました」
と、話して、根尾がブルペン入りしたのは、11月3日。投げ込み量は20球を超えた程度だが、みずから志願しての投球練習だった。
「ピッチング練習の意図は、スローイングの修正、原点回帰と説明されましたが二刀流を目指そうというのではありません。別の狙いがあったんです」(前出・スポーツ紙記者)
強肩だが、スローイングが安定しない欠点もある。投手兼遊撃手として他部員よりも多めの練習をこなしてきた大阪桐蔭時代のカンを取り戻す目的もあったようだが、これにニンマリしていたのが、近鉄出身の村上隆行打撃コーチだ。何でも、打撃の際に上半身と下半身が連動してできる「割れ」は投球の動作の中にもあるとして、こう進言していたのだという。
「根尾の打撃には『割れ』がなかったのでやってみたらどうかな、と」
「割れ」とは、ピッチャーと対戦する時、バッターの前足は投手側の前方に踏み出していく。その動作中、バットを持つ腕は後方に行く。この「割れ」と呼ばれる動きが根尾にはなかったのだ。
「いてまえ打線を支えた中村紀洋、タフィ・ローズもブルペンで投げ込みをし、この『割れ』の動きを確認していました」(ベテラン記者)
もっとも、根尾は右投げ左打ちなので、ピッチングで踏み込む側の足と、バッターボックスで前に出す足が異なる。しかし、「割れ」のコツを習得することはできる。打撃担当の村上コーチもブルペン入りに賛同したのは、そのためだ。この“いてまえ打法”で2年目の来季に打撃開花とならなければ、ファンは愛知県出身のドライチ、石川昂弥に乗り換えてしまうかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)