あのヒット歌手が「日活の成人向け映画」に出演するとは…まるで天地がひっくり返るような大事件だった。そんな歴史をここに、プレイバックする。
全員がハーフというふれこみで、歌にバラエティーに大活躍したのが「ゴールデン・ハーフ」だ。日独ハーフの高村ルナは、74年にグループが解散すると女優に転身。そして「修道女ルナの告白」(76年)で初主演。メジャーな芸能人が日活の成人映画に主演する第1号となった。ルナは続けて「ルナの告白 私に群がった男たち」(76年)でも主演。芸能界の内幕をテーマにした作品で、ハーフ特有の弾力性に満ちたボディは、銀幕を鮮やかに照らした。引退後はハワイで暮らしていたが、04年3月6日、51歳の若さでガンにより他界した。
平尾昌晃とのデュエット「カナダからの手紙」(78年)は、畑中葉子(60)にとってデビューから大ヒットの幸運をもたらした。ところが、翌79年には結婚・引退・離婚とジェットコースターのような展開を見せる。「それで芸能界に戻りたいって言ったら、世の中から大バッシングですよ」と、かつて週刊アサヒ芸能にこう心境を明かした畑中によれば、事務所からは脱ぐ仕事ならあると言われ、「それから、日活のほうへ話が進んだんです」という。
まだ20歳の肉体は、アイドルとしては失格でも、脱いだ姿で演技をする女優としては可能性があった。そして80年9月に公開された「愛の白昼夢」は、日活の成人映画史に残るメガヒットを記録。畑中はドル箱スターとして4本の主演作を撮り、歌手としても「後から前から」(80年)で一線に返り咲いている。
大信田礼子(71)の「同棲時代」がヒットしたのは73年のこと。世相を反映した曲として、当時の映像とともに使用される頻度は今も多い。
そんな大信田が出演したのは「ジェラシー・ゲーム」(82年)である。共演が夏木陽介、村上弘明、高橋ひとみと、この種の映画としては屈指の豪華キャストとなった。大信田のダイナミックな肢体もスクリーンでしなやかに躍動している。
伝説のスカウト番組「スター誕生!」(日本テレビ系)からデビューしたのは伊藤咲子(61)だ。デビュー曲「ひまわり娘」(74年)の健康的なイメージを打ち破ったのが、谷崎潤一郎原作の「刺青」(84年)でのハードなカラミであった。決してグラマラスではないものの、襲われるシーンなど4度のカラミをこなす伊藤の肉体は、男にとって危険な魅力に満ちている。
そして、70年代のトップアイドルであった天地真理(68)の日活成人映画デビューは、誰もが驚いた。主演作「魔性の香り」(85年)は、ジョニー大倉を相手に様々な性的なテクニックや体勢を繰り広げており「白雪姫のフルコース」が堪能できる。天地はデビュー後、他事務所の妨害策のためか元「夜のサービス嬢」だったとの憶測記事が流れたこともあったが、テクニック的には十分であったようだ。
芸能人による日活の成人映画出演の最後を締めくくったのは、「虹色の湖」(67年)のヒットで同年の紅白にも出場した中村晃子(71)である。バツイチに扮した「待ち濡れた女」(87年)は、元夫や若い男の刺激によって性的欲求が燃え盛る完熟美女を好演。スレンダーだが形のいい胸と、ぽってりとした唇が絶妙に悩ましかった。
いずれも後世に残したい“話題作”ばかりである。