10月29日、南北協力事業の一環として進めた北朝鮮・金剛山にある施設の撤去を巡って、韓国は対面協議を提案したが、北朝鮮側が拒んだことが明らかになった。
南北の融和がいっこうに進まない中、ソウルでは「北朝鮮居酒屋」が話題になっている。それが明らかになったのは9月中旬のこと。朝鮮日報など韓国メディアで、オープン準備中の建物の外壁に、北朝鮮の国旗と金日成、金正日父子の写真を利用したインテリアが掲げられていると報じたのだ。韓国事情に詳しいジャーナリストはこう話す。
「外壁のデザインを見た通行人から、警察や区役所に通報が寄せられ、国家保安法違反(北朝鮮を賛美する行為など)の疑いがあるのではないかと、議論が巻き起こりました」
ソウル市民の注目の的となった店は、もともと今夏まで「うまい京都」という店名の日本料理店だった。何度か来店したことのある韓国人女性はこう語る。
「老舗居酒屋をイメージさせるオシャレな外観で、刺身料理も新鮮で美味しかった。それでも今年になって日韓関係が悪化してから客足が鈍くなり、閉店したと聞いています」
そして次なる一手として打ち出したのが北朝鮮居酒屋だったのだ。その話題の店を確かめるため、10月下旬、本サイト記者はソウル・麻浦区にある弘大(ホンデ)に向かった。
深夜0時過ぎでもクラブ街や飲食店が軒を連ねる通りは人ごみであふれている。目的の店までは、弘大前から徒歩約5分。9月に行われていた外装工事は終わり、営業中だった。入り口のドアには、ハングル文字で「平壌」と書かれた電飾が飾られている。外壁には朝鮮半島地域の民族衣装を連想させる韓服姿の女性が描かれていた。が、全体を見渡しても、議論が起きた金日成父子の写真を利用したインテリアは見当たらない。
店内に入ってみると、北朝鮮の雰囲気を感じさせるイラストは壁に描かれているが、北朝鮮の国旗は飾られていなかった。
メニューを確認しても、「平壌ソジュ」と書かれたお酒以外は、ソウル市内にある居酒屋と変わらなかった。店内は、入れ替わり立ち替わり、20代前半くらいの若者で込み合っている。
「ニュースで話題になったことで、若者たちの飲み会の場として利用され、早くも人気店になっています。金日成父子のインテリアも批判意見が多かったことで、別のイラストに差し替えたそうです」(来店客の男性)
オープン前のドタバタ劇はどこ吹く風。ソウルの若者にとっては、南北関係の冷え込みより「インスタ映えスポット」のほうが大事なようだ。