「やれることは、全てやっておきたい」と、4月6日から仏国遠征に向かった池添謙一騎手(33)。目的はただ一つ。世界最高峰のGI凱旋門賞(10月6日、仏ロンシャン競馬場)で、怪物オルフェーヴルとコンビを組むためだったが、その夢はあっけなく破れた。
*
昨年の凱旋門賞では2着に惜敗したオルフェーヴル。日本のホースマンたちの夢は、ゴール寸前で散った。スポーツ紙デスクが振り返る。
「国内の主戦騎手こそ池添でしたが、阪神大賞典での暴走劇や天皇賞・春での惨敗、そして何よりもロンシャンでの騎乗経験がなかったことで、仏トップジョッキーのC・スミヨンに乗り替わった。池添は『昨年の夏は落ち込むこともありました』と話すほど、かなり落胆していましたね」
だからこそ、今年は春のGIシリーズ中にもかかわらず、フランスへの“武者修行”に旅立ったのだ。
「今年の宝塚記念も池添の騎乗が決まったことで、いちるの望みを託すという思いだったのでしょう。周囲の先輩騎手からの『日本馬と日本人騎手で制してこその悲願達成だろう』という言葉も心強かったでしょうし、フジテレビが密着取材するなど、ファンも池添とのコンビに期待していたと思います」(前出・デスク)
競馬専門誌「優駿」(中央競馬ピーアール・センター)3月号で池添騎手は、岩田騎手を相手に思いの丈をこうぶちまけている。
岩田 経験を積んだとしても凱旋門賞で騎乗のオファーがあるとはかぎらない。それどころか、行ったところで経験が積めるかどうかもわからない。そういう状況をすべてわかったうえでの決断だもんね。すごいことだと思うよ。オルフェーヴルにすべてを賭けるということだから。
池添 そう言っていただけるのはうれしいです。中には「何しに行くんや」って思っている人もいるでしょうから。
岩田 そういうのは気にしないほうがいいよ。
池添 はい。あの馬のことは誰よりもわかっているのは僕だし、あの馬で3冠を獲ったのは僕ですからね。ひとつひとつ、積み上げてきたものがありますから。
しかし、武者修行中の5月4日、「今秋の遠征時の鞍上はスミヨン」と、サンデーレーシングのHPで発表されたのだ。海外事情にも詳しい競馬ライターが話す。
「凱旋門賞の再戦を決断した時からの既定路線です。種牡馬入りを1年延長して現役続行となれば、惨敗は絶対に許されない。種付け価格に影響しますからね。ファンとしては残念でしょうが、そこはビジネス、浪花節は通用しませんよ」
そもそも4月のロンシャンはシーズンオフである。
「実のある武者修行にならないことは池添騎手もわかっていたはず。あくまでも“アピール”するための遠征なわけで、オルフェに乗れないとなればフランスにいる意味がない。だから6月10日までの遠征期間を切り上げて帰国した。まあ、今回は赤っ恥をかかされたわけです。もし、宝塚記念できっちり勝たないと、まさに恥の上塗りですね」(前出・ライター)
6月23日に行われる宝塚記念は、ジェンティルドンナ、ゴールドシップ、フェノーメノとの4強対決とも言われている。池添騎手の奮起に期待したい。