成長戦略のために、規制緩和が叫ばれていますが、一番の問題は、強すぎる流通ですね。例えば、ユニクロや大手スーパーなどが消費税還元セール禁止に反対しましたよね。
こう力説するのは「これからすごいことになる日本経済」(小社刊)の著者・渡邉哲也氏である。消費税還元セールとは、体力のある企業が増税後「セール」を行い、増税していない価格で販売することだ。
あのような会社がどんどん規模を拡大することによって、実は、中小零細の体力は削られて、結果、そこに対する雇用の機会も奪われてしまっているのです。優秀な中小企業こそが日本経済の特徴です。そこが疲弊するということは、日本全体の国内雇用を奪っているということなのです。
政府が消費税還元セール禁止を検討しているのは、消費者をいじめているのではありません。商品を納める中小零細企業は、体力のある流通企業と、言いなりの関係です。結果、増税分を納入価格に反映できず、損を押しつけられます。
規制緩和だけが言われることが問題であって、流通においては独占禁止法による規制強化が、議論されていません。流通の力が大きすぎることによって、生産者側の発言力が本当になくなっている。例えば、日本の家電メーカーの中長期的な不況の原因の一端は、大手の家電販売店の力が強すぎて価格決定権を握られてしまっていることにもあると考えています。どれほどいい製品・商品を作っても、流通に乗せてもらわないと売れないのですから。
流通の部分に関しては、誰も触れていないですけど、これをやらないと消費者も生産者も壊れていく一方で、本当に困ったことになるのです。特に被害が大きいのは地方です。その土地にしかない、いい商品ってたくさんあるじゃないですか、その地方でしか買えないものが。ところが、大手スーパーがその地方にできると、地元の産品が並んでいる商店街が全部食われてしまうのです。結果、地方の特色のようなものも失われてしまうのです。
流通に関しては競争によって淘汰するのではなくて、大手も中小零細も、適正な競争ができるようにしなければなりません。消費者の選択の自由を守るという意味でも解体すべきだと思っています。強すぎる流通についての考え方を誰も提示していないのが問題点なのです。
アベノミクスに関しては一定以上の評価をしている渡邉氏。円安により大手メーカーを救済することで、そこに部品などを納める中小企業を救ったこと。また、クビ切り法案などを提案しようとしている産業競争力会議も実は、政権側が“問題児”たちを囲い込んでいるだけなのだと見ている。確かにメンバーの竹中平蔵氏は、ブレーンをやっていた維新の会を離れた。
デフレ脱却にはそれが重要なのです。安倍総理自身は、「生産者が笑える社会」と言っていますから、それをやるには、流通解体をやれと言いたいのです。
渡邉哲也(経済評論家)