いきなりですが、本屋や図書館に足を運んだ際、突然に尿意を催す現象を「青木まりこ現象」と言うそうで、1985年、青木まりこさんという方が、ある雑誌の投稿欄に「書店に行くたびに便意を催すようになった」という趣旨の投稿をされ、たくさんの反響があり、付いた現象名だとか。
で、殿のレギュラー番組の中で〈意外と知られていない現象名〉といったテーマを扱うことになり、打ち合わせの場で、ディレクターが「青木まりこ現象」について説明すると、「へ~、そうなんだ」と、殿はいたく驚き、かなりの食いつきを見せたのです。さまざまな意外と知られていない現象名について、ディレクターが説明を続けると、そのどれもに軽く驚き、関心を示したのでした。そして、ひととおり説明を聞いた殿は、ややあって、首をコキコキやる仕草をやりながら、
「俺のこのクセもよ、『緊張するとこの動きをする。これを我々は“ビートたけし現象”と呼んでいます』っていうのはダメか?」
と〈意外と知られていない現象名〉に、さらにオリジナルなアイデアを追加されたのです。で、殿のこの提案がきっかけとなり、他にもこんなものがある、あんなものがある、といった感じで、打ち合わせは盛り上がって終了し、テレビ関係の方々が楽屋を出ていくと、殿、わたくしともう一人の弟子の3人だけになり、しばしの静寂のあと、殿はおもむろに、
「おい、さっきの現象のやつよ、もっといろいろあるな」
と、切り出したのです。そして、
「昔よ、俺がトイレでおしっこしてたら、きよしさん(相方のビートきよしさんね)が隣に来て、ションベンしだしたんだよ。それでションベン終わって、きよしさんがチ○ポ振ってたら、あいつのションベンの滴が、俺の左目に入ったんだよ。あの時は殺してやろうと思ったけど、これを『きよしの滴』って言うのはどうだ?」
と、思いっきり漫談口調にて、トラウマな思い出を語りだしたのです。で、殿の口から、きよし師匠の名前が出たので、わたくしが、「殿、そういえば、きよしさんが横浜に1年前にオープンした焼肉屋『よしなさい』。なんか、僕の知り合いが何度か行ったら、いつも閉まってたみたいですよ」と、最新情報を少しばかり面白がって伝えると、殿はいったん「ウハッ!」と吹き出したあと、
「だいたい、ないんだから。あいつの焼肉屋なんてのは、ハナからないんだから。どうせ知り合った社長に頼み込んで、金出してもらってやってるだけなんだから。もともとあいつの焼肉屋でも何でもないんだから。しかし、あいつはずーっと同じことやってんな」
と、笑いながらも、いたって冷静に、きよし師匠のビジネス哲学について、軽くツッコんだのでした。ちなみに、横浜日ノ出町にある、焼肉店「よしなさい」は、ただ今、厨房をリニューアル中で、再度、オープンするそうです。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!