もはや東京五輪は2021年への延期が決定的となったようだ。
国際オリンピック委員会(IOC)で最古参のディック・パウンド委員は3月23日(米国時間)、IOCが東京五輪の1年延期を決定したとUSAトゥデイ紙に発言。それを受けて米四大ネットワーク局のNBCでは、IOCや日本政府、世界保健機関(WHO)が出すいかなる結論も支持する用意があるとの声明を発表した。
「NBCはIOC予算の半分以上を占める巨額の放送権料を支払っており、その発言力は絶大です。そして9月にシーズンが始まるアメフトの試合中継も行なっていることから、五輪を数カ月後にズラすくらいなら丸一年の延期を選ぶのは当然でしょう。そのNBCがIOC支持を打ち出したということは、五輪の1年延期がすでに決定事項であることを示しています」(スポーツライター)
ただ、五輪が1年延期した場合には、初のアメリカ開催となる「世界陸上2021」と開催時期が重なることが懸念されていた。
それについて主催者の世界陸連では同じく3月23日に、世界陸上を延期する意向を表明。これで五輪延期に関する大きな障害がひとつなくなった形だが、この決定にもNBCが大きく関わっているというのだ。
「NBCでは世界陸連や全米陸連とも放送権契約を交わしており『世界陸上2021』もNBCが放送する予定です。だからNBCにとっては、五輪の延期に合わせて世界陸上も延期してもらうのがベストな選択だったわけです。そしてNBCが五輪延期への支持を即座に表明した裏側には、世界陸上の延期で世界陸連と合意が取れたという事情があったのは確実でしょう」(前出・スポーツライター)
なお現時点では、「世界陸上2021」がどの程度の延期になるのかは明らかになっていない。これについて前出のスポーツライターは、1年延期にはならないのではないかとニラんでいるという。
「4年おきの五輪とは異なり、世界陸上は2年おきの開催。そのため2021年大会を翌年に延期すると2022年・2023年と2年連続での開催となってしまうので、それは避けたいところでしょう。そうなると現在の8月開催を秋にズラすことになりそうですが、秋には全米人気ナンバーワンスポーツのアメフトが始まり、週末はアメフト観戦というのがアメリカの大衆文化。NFLやカレッジフットボールの放送権も持つNBCとしては、世界陸上とのバッティングは避けなければなりません。その解決策として、世界陸上2021は『秋に開催、ただし平日のみ』となる可能性もありそうです」
はたして世界陸上2021は変則日程で開催されるのか、それとも週末には100メートル競走やマラソンなどの人気競技を外すようにするのか。世界陸連とNBCでは知恵を振り絞っているところかもしれない。
(金田麻有)