東京五輪は2020年のドラフト戦線にも影響を与えそうだ。
東京都高校野球連盟と朝日新聞社が、オリンピックイヤーの2020年(第102回全国高校野球選手権)の東・西東京大会の準決勝と決勝を東京ドーム開催することを発表した。五輪・パラリンピックの影響で神宮球場が使用できないからである。その通達があった16年から東京都高野連は代替地を探し、プロ野球、社会人、学生野球の各連盟とも話し合ってきた。国内の野球組織が“聖地・神宮”を取り上げられ、話し合って危機回避をしたわけだが、ビンボーくじを引かされたのは、社会人野球のようだ。
「高校野球が7月に東京ドームを使い、神宮を明け渡すヤクルト、ソフトボール会場となる横浜スタジアムを本拠地とするDeNAも、7、8月に東京ドームを使用します。そこに東京ドームを本拠地とする巨人との絡みもあって、夏に東京ドームで決勝が行われる社会人野球の都市対抗は10月に延期されることになりました」(体育協会詰め記者)
社会人野球といえば、11月に日本選手権もある。つまり、来年、社会人野球の選手は、秋にピークを持っていくような調整しなければならない。そうなると、夏の都市対抗戦を見て、社会人選手の指名を決めていたプロ野球スカウトは、その力量を見極めるのが非常に難しくなってくるのだ。
「例をあげれば、昨年、阪神スカウトは夏に都市対抗戦を見て、近本光司(大阪ガス)の指名を繰り上げました。それが、来年の場合、夏場は選手は調整中の状態となる。そうなると、その力量がわからない点が出てくるんです」(在京球団スタッフ)
ドラフト会議は10月下旬。高校野球は試合会場こそ変わったが、日程では大きな変更はなかったから高校球児は見極められるだろう。しかし、社会人投手はそうはいかなくなるというわけだ。
ドラフト直前に都市対抗を行い、その後に日本選手権を控えている以上、来年の夏場は、プロ三軍との試合、会社同士の練習試合ということになり、全力投球はしてこないだろう。
「仮に全力投球してくる社会人投手がいたとしても、相手バッターも調整中です。その投手が好成績を収めたとしても、信用できません」(前出・在京球団スタッフ)
逆に、実力を秘めた社会人投手が低い評価を受ける可能性もある。いや、「コワくて指名できない」の声は単なる冗談ではないのだ。指名見送りもあり得る。社会人のドラフト候補は、大きなトバッチリを食らいそうだ。
(スポーツライター・飯山満)