張本氏が再反論し、ガチンコ乱闘に発展したが、
「ダルビッシュは本当に怒っているようですね。『メジャーのOBにそんな人はいない』なんて、普通は言わないですよ」(在米ジャーナリスト)
では、両者の激突を客観的に分析するとどうなるのか。まず、前出の特派員はこう話す。
「張本氏の毒舌には誰も反論しないですよね。何だか怖いし、3000本打っている実績もあるし。だからダルビッシュぐらいの立場の選手が一石を投じないと、と考えて、張本氏に『喝!』を入れた形ですね。まぁ、『川崎はチームに必要とされている』発言はある意味、当たっていますが。そもそも3A降格に際して、ギボンズ監督が選手を集めてミーティングを開き、選手たちが川崎にお別れを告げられるよう取り計らった。メジャーではこんなことはまずありえない。異例中の異例です。それだけチームに愛されている証拠ですね」
通常は翌日に空のロッカーを見て、皆が降格を知る。が、エース左腕のバーリーは「寂しい。カワサキ残留のために多くの選手がポケットマネーから彼の給料を払ってもいいと思っている」と話すほどだった。
その理由として、先の在米ジャーナリストはこんなエピソードをあげるのだ。
「メジャーリーグが運営するテレビ局に、ブルージェイズの選手が試合前にインタビューを受けている時、『今からカワサキを呼ぶよ』と言い、川崎が英語の辞書を持って入ってくると、『ウチのおもしろいチームメイトだ』と紹介される。川崎は辞書を見ながら『ナメんなよ』などと言ったりして大ウケ。そういう映像が繰り返し流され、地元トロントでは大人気です。張本氏の『英語ぐらい話さないと失礼だ』という指摘については、日本人選手には珍しく、川崎には通訳がいないため、辞書を片手にしゃべっている。通訳なしでやっているからチームに受け入れられ、人気者になっていることを、張本さんは知らないでしょうからね」
逆転サヨナラ打を放った試合では「アイム・ムネノリ・カワサキ。アイム・フロム・ジャパン! アイム・ジャパニーズ!!」とハイテンションで絶叫してもいる。在米ジャーナリストが続けて明かす。
「ベンチでも日本語と英語をごちゃまぜにして『いくぞー』『逆転するぞ』などと声を出すムードメーカー。選手たちも何となくわかるみたいです。それどころか『キャッチボールやってくれるの? ありがとね』などと日本語でバンバン話しかけたりも。ただ、ダルビッシュの言うことは当たっていますが、普通、控えの選手はあんな派手なパフォーマンスはやりません。日本人だからメディアに取り上げられ、話題になる。でも、川崎はそれが自分の生きる道だと思っているんです。試合前に“カワサキダンス”という、変なダンスのようなストレッチをやっているのが繰り返し地元テレビ局で流れたりして、コメディアン的な扱いをされている気はしますが」
「マスコットボーイ=コメディアン」かどうかはともかく、張本氏の指摘にも一理あるような‥‥。
最後に、スポーツ紙デスクは、張本氏の苦言をこう解説するのだ。
「張本氏は『メジャーのレベルは決して高くない。野手も投手もテクニックは日本のほうがうまい。ただ、パワーがある。メジャーはパワー優先の野球であり、細かいプレーができない』との持論があり、日本の野球が上だと信じている。こうした状況で、猫も杓子もメジャーに行けば、日本野球は潰れてしまいかねない、と。結局、ダルビッシュや川崎が嫌いなのではなく、メジャーに辛口というか、日本野球を愛するがゆえに、厳しいことを言ってしまうんですよ」
さて、野球ファンの読者諸氏はどちらに「喝!」を与えるのか。