「いや~、しかし参ったな。だけど、とりあえずは耐えるしかねーか」
4月11日(土)、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」出演のため楽屋に入った殿は、わたくし、そしてもう1人の弟子を認めると、いまだ終息の見通しが立たないコロナウイルスの猛威を嘆いて言葉を漏らしたのです。これはもう仕方のないことですが、ひと月程前から、会えば必ずコロナの話題から雑談が始まる状況が続いています。
で、思えばキャスターのおかげで毎週土曜の夜、“楽屋にて殿と雑談ができる幸せな時間”を持てるようになって今年で12年。普段は実にバカバカしい話題(「芸能人の誰誰が実はカツラである!」とか)が大半なのですが、わたくしにとって人生を左右するほどの“いくつかの大事な仕事”なども、キャスター前の楽屋での雑談から実現する運びとなったりしました。
例えば、殿と一緒に舞台に立てる夢のような場である「ビートたけし単独ライブ」も、毎週土曜の雑談から生まれたものであり、他にも、副編集長というありがたい立場で参加しているWEBマガジン「ビートたけしのお笑いKGB」も、やはりキャスター前の楽屋での雑談から生まれた企画です。そもそもキャスターのスタッフとして参加するようになった経緯も、唐突なものでした。あれは12年程前、マネージャーから「たけしさんが明日の新番組の打ち合わせに、北郷さんとアタルさん(〆さばアタル)を呼ぶようにと言ってますので、おふたりは明日15時にTBSに行ってください」と、指示がありました。どんな番組で何をやるのか? まったくわからないまま、不安な気持ちで打ち合わせに参加したのをよく覚えています。
さらにその打ち合わせ後、「おい、ちょっとそこの焼鳥屋で焼酎でも飲むか」と殿から誘われ、TBSから徒歩1分の焼鳥屋で「だいたいどんな番組かわかったろ? まーあれだ。これから少しずつ内容を変えていくから、お前らもちょっと頼むな」と、初期北野映画並みに、“余計な説明はなし。でもやることはわかるだろ”といった感じで僕らがキャスターに参加することが決まると、殿は続けて、
「番組の芸能コーナーでよ、実はあのタレントにはこんな過去があるとか、実は一緒に戦争に行った仲だとか、でたらめなことを俺が好き勝手言う『事情通』ってのをやるから、お前らもちょっとネタ出せな」
と、“殿が立てた企画に微力ながら弟子もネタを出していく”といった形ができあがり、そのやり方が確立されたからこそ、ライブやお笑いKGBといった企画が、実現できるようになったのです。
とにかく、かのドラマの名セリフ「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」ではありませんが、殿関係のわたくしの仕事の全ては「会議室で決まるんじゃない、キャスター前の楽屋で決まってくんだ!」です。はい。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!