わたくしごとで恐縮ですが、このたび、師匠の事務所独立に伴い、22年ほど在籍した「オフィス北野」から「T.Nゴン」へと、移籍することになりました。相変わらずの若輩者でございますが、今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
まったく学のないわたくしには似合わない“ただただ堅い”あいさつから始まった今回の連載、やはり、“事務所移籍までの経緯”について、書かないわけにはいきません。1カ月ほど前、殿の独立のニュースから始まった一連の流れの中で、事の真相については、先日、たけし軍団の兄さんら(ダンカンさんや水道橋博士)がマスコミ各位にあてた〈師匠・北野武氏の独立について〉といった声明文の内容が極めて正確なものとなっていますので、そちらを検索するなり、読んだ人に聞くなりして、確かめていただければ、と。
で、たけし軍団の末端にいる、40を過ぎてもいまだ“若手”と呼ばれるわたくしは、「殿は独立、たけし軍団は残留」といった通達を受け、〈自分は今までどおり残留で、今後、殿とは違う事務所でやっていくのだな〉と、漠然と受け入れていました。が、とある土曜の夜、殿にお会いするといきなり、本当にいきなり、
「新しい事務所だけどよ、お前、来てもいいんだぞ」
と、“なかなかの衝撃発言”をもらい受けたのです。さらに、
「まー、お前はライブとか台本とか、俺の仕事が結構あるから、こっちに来たほうがやりやすいだろ?」
と、さらりと続け、
「あれだぞ。自分で取ってきた仕事なんかは、うちは一切マージンを取らないから」
と、まさかの、芸能事務所にはあるまじき超好条件をさらりと口にし、最後には、
「うちは社員旅行もあるよ」
と、“事務所勧誘ギャグ”をかぶせてきたのでした。
そんなやりとりがあった4日後の23時過ぎ、家でだらだらしていると、
「おう、北郷か? たけしだけどよ」
と、殿からの直電が入り、用事を頼まれ、元気よく返事を返すと、用件を言い終えた殿は電話の切り際に、
「あとよ、来週あたりどっかで事務所に来いよ。一応、お前だって契約とかあんだろ。まー、また電話するわ」
と、まるで“カニを大量にもらったから、ちょっと食べに来い”的な軽いトーンで新事務所への誘いを改めて放り込んできたのです。
で、そんなやりとりがあった4日後、兄弟子のダンカンさんにお会いすると、
「昨日、取材で『オフィス北野に対して不満ってありますか?』って聞かれたから、『はい。社員旅行がなかったのが不満です』と答えておいたよ」と、軽くふざけた事例を報告してきたのです。この時、「うちは社員旅行もあるよ」といった殿の発言を思い出し、いつだって“師匠と弟子はシンクロしている”と、勝手に納得するわたくしでした。
とにかく、なんだかよくわかりませんが、そういうことなのです。はい。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!