「こないだ、せんだみつおと十数年ぶりにあったんだよ。そしたら『コマネチってギャグ、俺がタケちゃんに3000円で売ったって噂があるんだけど、それ、本当だってことにしてくれないかな』なんて言うんだよ。3000円ってちょっとセコすぎるだろ。しかし、あいつは相変わらずくだらねーな」
つい先日、殿の番組収録現場にせんだみつおさんがふらっと立ち寄り、冒頭のやりとりがあったと、殿はうれしそうに教えてくれたのです。
不思議なもので、その十数年ぶりの再会のちょうど1週間程前、殿はなぜか思い出したように、
「せんだみつおなんて、もう何十年も闇営業だけで食ってんだから、大したもんだ」
と、唐突に口にしていました。
そんなせんださんとの久しぶりの遭遇に、会話はまだまだ弾みます。
「あいつよ、『タケちゃん、新しいギャグあるよ。買わない? 俺ん家はニコタマ(=二子玉、股間を指す)!』だって。くだらねーよ!」
さらには、
「あいつと昔、『タケちゃん、俺、美空(ひばり)さんにかわいがってもらってるから、俺が行ったら夜遅くても大丈夫だから、今から美空さん家に行こう』って言うから、付いて行ったんだよ。それで、せんだが美空さんの家のピンポン押して『どうも、せんだです』って、インターフォンでやったら、女中さんが出てきて『何ですか、こんな夜中に。困るんですけど。どちらのせんださんですか? 帰ってください』って全然取り合ってもらえねーんだ」
それでも二人してピンポンピンポンやっていると、美空さん宅の隣がエジプト大使館だったようで‥‥。
「そこの警備が、2階から機関銃をこっち向けてニラんでたんだから。当時、あれだよ。エジプトが中東戦争でもめてて、厳戒態勢だったから、俺たちのことを怪しいヤツだと思ったんだ。あれにはぞっとしたよ」
しかし、美空さんから中東戦争へと、なんて振り幅の大きい漫談でしょうか。
この日は他にも「せんだほどケチはいない」という話で、「あいつは『タケちゃん、金貸すからおごってくれ』って言うんだよ」だの「俺の靴を履いて帰った」だのと、ネタのオンパレードでした。ひとしきり盛り上がったあと、わたくしが「殿が漫才ブームで出てくるちょっと前の元祖お笑いマルチタレントが、せんださんでしたよね」と、改めて確認すると、殿は、
「そうだよな。あいつは『うわさのチャンネル!!』なんかのバラエティでじゃんじゃんテレビに出てたからな。だから、あれだよ。あいつがちょっと調子悪くなって落ちてきた時と、俺たちが上がってきた時に交差してるから、一時はよく一緒になったけどな」
と、冷静に振り返っていました。この日は、殿の最大級の褒め言葉である、「くだらね~な」が、最近では一番聞けた日でもありました。改めて、せんだみつおさん、恐るべし!
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!