「優勝は、春風こうた・ふくたです」
前回の連載でも書いた、1月末に浅草で開催された若手漫才コンテスト「ビートたけし杯 漫才日本一」にて、ドラムロールが鳴り響く中、優勝コンビの名前を読み上げる手はずだった殿は、お約束である冒頭の「名前ボケ」をかましたのです。もちろん、殿の後ろに居並ぶ、たけし杯出場漫才コンビ10組全員が殿のボケを合図に、まるでリハーサルでもしたかのように、しっかりと皆でずっこけたのは、お約束とはいえ、見事な光景でした。
ちなみに春風こうた・ふくたさんは、浅草を拠点に活躍された大ベテラン漫才コンビであり、殿が浅草修行時代に「よく飲んだ」先輩です。
で、この日の殿は、いつものようにスキあらばボケまくり、会場をどっと沸かせていたのですが、極め付きは、優勝コンビに読み上げて渡した表彰状です。そうです。殿が近年好んで多用する、表彰状読み上げボケです。今回はその文面をノーカットで記します。
「表彰状。あなたたち、マッハスピード豪速球は、本日1月28日に開催された『たけし杯 漫才日本一』において、見事優勝されました。おめでとうございます。しかしながら、この大会は、わたくしが名前だけ貸してギャラをせしめようといった、ヨコシマな考えから引き受けた大会であり、その証拠に、よくわかっていません。なんでも、聞くところによると、優勝賞金が30万だと聞きました。そこでものは相談ですが、30万の1割の3万円をキャッシュバックしていただけないでしょうか? ご承知のとおり、去年、事務所を独立したばかりで、何かと物入りなため、そうしていただけると大変助かります。それに、本日はギャラの他に取っ払いでいくらかもらえるものと期待してやって来たのですが、先ほど係の人に『そんなもの出ません!』と叱られ、途方に暮れていたところなので、とにかく、後で楽屋に顔を出します。それはさておき、あなたたちが、本日一番ウケた事実は変わりありません。ですから、この優勝をバネに、よりいっそう飛躍することを期待しています。そして、売れたあかつきには、わたしを使ってください。よろしくね。本日は優勝、おめでとうございます。2019年1月28日、名前ばかりの名誉会長・ビートたけし、以上」
ちなみに、文面にもある「売れたら使ってください」的言い回しは、殿が好んで使うフレーズです。
20年程前、ボキャ天ブーム真っ盛りの頃にも、六本木のお好み焼き屋で偶然、ブームに乗りまくっていた芸人数組と居合わせた殿は、先に退店する際、芸人さんたちの飲み代を気づかれずに支払い、店を出たのですが、店の方が芸人さんに伝えたため、慌てて彼らが飛びだしてきて「すいません。ご馳走様でした」と、お礼を述べて殿を見送ると、車に乗った殿は、
「売れたら使ってね」
と、一言いい残し、去っていったものでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!