6位と7位にはアキとユイ(橋本愛)の「潮騒のメモリーズ」のコンビを巡るエピソードがランクイン。前半のハイライトとも言える6位の第53話「おらの大失恋」では、アキがようやく失恋のショックから立ち直り、再びユイと2人でお座敷列車で「潮騒のメモリー」を熱唱する。
さらに、第7位となった第94話では、親友だった2人の関係が一変。父の急病によりアイドル活動を休止し、上京の機会を失いグレてしまうユイと、上京したが人気が出ず下積み生活を続けるアキが久々に北三陸の地で再会する。そこで、お互いの不満をぶつけ合い激しく罵り合うが、最後には仲直りして、2人で自転車に乗るまでのやり取りにドギマギしたオヤジも少なくないはずだ。
8位の第93話のエピソードも涙なしには見られなかった。アイドルになったものの泣かず飛ばずで実家に帰っていたアキを、マネジャーの水口(松田龍平・30)が東京に呼び戻そうとする。アキの携帯電話の留守電に「キミの代わりはキミしかない」と何度も説得の言葉を吹き込む時のやるせない気持ちに胸がジーンと熱くなる。
9位は、第80話「おら、大女優の付き人になる」から。初恋相手の種市先輩(福士蒼汰=20=)が、東京や地元の悪口ばかり言うことに腹を立てたアキが、「おらの初恋の相手はこんなちっちぇ男かよ」と、厳しく責めながらも先輩を励ますという乙女心に胸キュンしてしまうこと請け合いだ。
10位は、かつて春子が、鈴鹿ひろ美の影武者をさせられたことを知ったアキが電話で、「ちゃんと一人さ届く歌っこ歌ったママみでぇな歌手になりでぇんだ!」と告げ、辛酸をなめ続けた春子が報われる印象的な場面(第97話)となった。
1日3度「あまちゃん」漬けの生活だというコラムニストのペリー荻野氏がドラマの人気を読み解く。
「このドラマは表面的にはアキやユイが成長していくという朝ドラのヒロイン成長物語の体を取っていますが、本当はお父さん、お母さん世代が再生する話なのです。私がいちばん感動したのは、春子と安部ちゃんの仲直りの場面です。女同士ってお互いをリスペクトしているという意味で、長い間嫌いだけど気になってたみたいな関係があるんです。現実には仲直りできないことが多いだけに、この2人のように仲直りできたらいいのにって思います。ここがクドカン(宮藤官九郎=43=)脚本のすごいところ」
見る人により流す涙の色も違うところも、あまちゃんが幅広く支持されるゆえんなのだろう。
前出・亀和田氏は言う。
「アキの故郷は視聴者のオジサンたちにとってのユートピアそのものなんです。天野家はアキ、春子、そして夏夫婦の3世代が同居している。スナック『リアス』もカウンターの中に春子、ユイ、そしてお客は勉さん、大吉、ヒロシら3世代が一緒にいる。あのカウンターに座って一杯飲むことができればと思っているオジサンは多いハズ。今やあまちゃんがオヤジ族の1日の生活のリズムを作っているだけに、ドラマが終了してしまうのが怖いですね」
残るは9週、ドラマ終盤には3・11の震災の場面もあるという。ますます目が離せないあまちゃんに、あと何度泣かされることか。