3位には、1位と同じく第72話の主要出演者が勢ぞろいとなる旅立ちの場面が選ばれた。ここでは、駅のホームで母娘が別れるシーンに涙した人も多かったようだ。
「僕がいちばん感動したのもこの場面ですね。母の春子は叱りつけるような言い方ですが、セリフが深いんです」
と語るのは、第52話で「トシちゃん似の男」としてビックリ出演した田原俊彦のものまね芸人の原俊作だ。
電車が出発する間際に、アキが春子に、
「私、1年前と変わった?」
と尋ねる。するといつもは娘を「バカ」「ブス」とこき下ろしていた春子が神妙な面持ちで、
「変わってないわよアキは。昔のままで地味で暗くて向上心も協調性も存在感も花も個性もパッとしない娘だったけど、だけどみんなに好かれた。こっちに来てみんなに好かれた。あんたじゃなくてみんなが変わったんだよ。自信持ちなさい。これはすごいことなんだからね」
と娘を励まして送り出すのだ。親子の深い絆を感じさせる名場面と言えるだろう。原が続ける。
「母娘の気持ちがグッと身にしみました。でも、いちばん感動したのはこのドラマにそっくり芸人・原俊作を呼んでくれたことですね。なるべくオーバーにやってくれと言われて戸惑いましたが、台本にも『たーとしひこ』と書いてあったのでやるしかないと思い、いつも以上に思いっ切りやっちゃいました」
続く4位は、第70話の夏と春子の壊れた母娘関係が、長年の歳月を経て修復するエピソードに票が集まった。
25年前、歌手になるために上京しようとする春子。その気持ちを本気と知りながらも、大反対した夏。以来2人の関係には、言葉には出さない深い溝が刻まれていた。アキの上京話でその昔話が再燃すると夏は、
「すまねがったな、春子」
と初めて娘へのわびの言葉を口にする。その直後、
「すっとした。やっと言えたべ。うどんでも食うか」
長年のわだかまりは一瞬で氷解。ケロッといつもの親子に戻る、涙がホロリとにじみ出る場面だ。
5位に入った第96話「おらのママに歴史あり2」での、若き日の春子が鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子=49=)の影武者としてレコーディングさせられるシーンも記憶に新しい。前出・亀和田氏が言う。
「いつかはアイドル歌手になることを夢みる春子が、喫茶店のウエイトレスをしながら、無理やり影武者をやらされ、さらには生放送の歌番組で口パクの音合わせまでさせられてしまう。この屈辱に耐えていた春子が、最後に『潮騒のメモリー』でデビューさせてくれとプロデューサーの太巻(古田新太=47=)に申し出ると、『プライドがないのか』と拒否されてしまう。最後に『プライドあるに決まってるじゃない。このままじゃ終われないから今日までアンタの言うことを聞いてきたんです! バカにしないでよ』とキレるシーンはあまりにかわいそうです。若き日の春子を演じる有村架純さん(20)は、かわいいだけでなく、小泉さんの若き日を演じるにふさわしい魅力がある」
思い出しただけで涙が出てくる名場面だ。