選挙特番では、並みいる政治家たちを「いい質問」でなで斬り。まさに“池上無双”の真骨頂を見せつけたジャーナリスト・池上彰氏が、「アサ芸」恒例の夏の合併号に2週連続で登場! 今週は、アベノミクス人気で舞い踊る“安倍内閣の本質”を納得スッキリ解説する!
──昨年12月の総選挙に続き7月の参院選でも、候補者への池上さんの舌鋒鋭い質問が話題を呼びました。
はい、私は厳しい質問をすることが「政治家を育てる」という思いなので、当選者には容赦のない質問をしています。でも、今回、維新の会の橋下徹共同代表は最初から個別の中継はやらないと言う。では石原慎太郎共同代表にと思ったら、前日から体調が思わしくなく、結局、直前に断られてしまいました。
──自民党の丸川珠代議員に至ってはインタビュー直前に事務所から姿を消して逃げてしまいました。
ハハハ、そうでしたねぇ(笑)。
──今回の参院選は、前評判どおり自民党が圧勝しましたが、この結果をどう捉えますか?
そうですね。安倍政権に対しての信任が得られたということですよね。端的に言えば、アベノミクスに対して国民の期待感が強かったということです。
──でも、今のところアベノミクスの効果を実感してないんですが‥‥。
なるほど。先日、テレビ局の取材でサラリーマンの町・新橋の居酒屋へ行きました。中小企業のサラリーマンに「アベノミクスの効果ありますか?」とインタビューしたら、誰もが「ない」と言う。それどころか「給料が下がっている」と言うわけですよ。その中で1人だけ「効果があった」という人がいまして、その理由を尋ねると、株をやっているからと言うんです。庶民レベルでいうと、なかなかアベノミクスの効果は実感できていない。でも、株をやっている人は明らかに効果を感じている。つまり、同じ会社の中でも株をやっている人とやっていない人の間で格差が生じるというせちがらいことになっているんですね。
──銀座や六本木の高級クラブで聞いたら、反応はまた違ってくる?
恐らくそうでしょうね。確かにアベノミクスはこの先どうなるかわからないところはあります。ですが、日本はこれまで20年にわたってデフレの状態が続いていたわけです。ですから、乱暴な言い方をすれば何でもいいから(経済が)動いてほしいという庶民意識があったわけです。そこへアベノミクスにより、少なくとも円安と株高という変化が生まれた。とりあえずこれでいくしかないのかな、という形でアベノミクスが信任を得られたということです。
──しかし、一方で選挙戦は、それほど盛り上がらなかったように思います。
そう、投票率は52.61%と戦後3番目の低さでした。つまり、アベノミクスが熱狂的に支持を得たのであれば、投票率は上がらないまでもこんな下がることはないはずです。それが、ここまで伸びなかったというのは、「どうせ結果はわかっている」と、どこかシラけて投票に行かない人が大勢いたということです。消極的ではあるが、とりあえず安倍政権に期待してみよう、というのが今回の参院選の結果なんですね。
◆アサヒ芸能8/5発売(8/15・22合併号)より