これまで日本国内のカジノ構想は、「浮かんでは消える」都市伝説のような存在だった。元都庁担当記者だったデスクが振り返る。
「石原慎太郎氏が99年の都知事選で『お台場カジノ構想』を公約に掲げ、長野県の田中康夫元知事や高知県の橋本大二郎元知事なども、カジノに『YES』の態度を表明するも、国を突き動かすまでには至らなかった。03年6月の東京都の定例会見で『ずいぶん研究し、既存の法律に触れない運営を考えたけど、やっぱり無理ですな』と、無念そうな表情でした。それでもカジノ構想の撤回に首を振り、国に法整備を求めていくと断言していた。あれから10年、機運が高まるというよりも、機運が熟したというムードです」
にわかに沸騰するカジノ構想に、自治体の思惑も交錯している。誘致の最右翼といえば、東京都のお台場。対抗馬が、大阪府の湾岸ベイエリアという構図だ。経済誌編集者が話す。
「お台場構想をずっとバックアップしてきたのが、他ならぬフジテレビ。02年の都庁展望台カジノのイベントをBSフジが協力し、総合司会は同局の佐藤里佳アナが務める気合いの入りよう。現在も、局内に『特区事業準備室』を設けるほど、旗振り役を務めてます。フジ・メディア・ホールディングスの日枝久会長も『首都東京の顔にしたい』と意欲を見せている」
一方、後れを取った大阪府も巻き返しに必死だ。
「日本維新の会」の橋下徹共同代表と松井一郎大阪府知事のコンビが、大阪経済の起爆剤にしようと、懸命の誘致を続けている。
「日本維新の会は政策提言に『カジノ合法化』の一文を盛り込み、国政の場で解禁に向けた法整備を訴えています。松井知事は、昨年夏、大成功を収めているシンガポールの『マリーナ・ベイ・サンズ』を視察し、準備に余念がありません」(大阪府庁詰め記者)
しかし、本命視される都市型カジノを推進するうえでは、いくつものハードルが待ち受けているのも事実だ。前出・経済誌編集者が続ける。
「お台場なら、例えば、数キロ圏内の開発が進み、高層マンション群が立ち並び始めており、地域住民のコンセンサスを得られるのか不安が残る。また、五輪招致との兼ね合いも気にかかります。一方の大阪にしても、ベイエリアの交通網整備が遅れてます。何よりも不安視されているのが、地元経済界の意向です。大阪財界に強い影響力がある大阪ガスの尾崎裕社長が慎重な姿勢を見せているなど、一枚岩ではありません」
こうした、地域対策を考慮した場合、ガゼン浮上するのが、「仙台カジノ構想」だ。宮城県の仙台空港を核としたカジノ併設の観光都市構想だという。社会部デスクが解説する。
「仙台が注目しているのは、ズバリ『復興カジノ』だからです。仙台空港(宮城県名取市)といえば、2年前の東日本大震災で発生した巨大津波に飲み込まれていく生々しい映像が思い出されます。11年の7月にも、カジノ議連を中心に積極的な働きかけが行われるも、他の法案が優先され見送られた経緯があります。しかし、『東北復興の財源確保と観光活性化』の起爆剤として、カジノ議連の中でも見直されています」
つまり、地域住民のみならず、政財界の歩調も合わせやすいというメリットも大きいのだ。