近年、若手の台頭で注目を浴びている広島東洋カープ。しかし、ペナント優勝は91年以来、22年間も遠のいたまま。そんな状況に檄を飛ばすのが、昨年まで投手コーチを務めていた大野豊氏だ。カープの黄金時代には「七色の変化球」で投手王国の一翼を担った大野氏が、CS初進出を目指す古巣に再建策を提言した。
今季、一時は3位に浮上するも、現在は5位に甘んじる広島(7月25日現在、以下同)。しかし、巨人、阪神の2強を除いては、最下位のヤクルトまで4ゲーム以内にひしめく激戦だけに、まだまだクライマックスシリーズ(CS)進出の可能性も大いにありうるだろう。
「4弱」がCS最後の枠を巡って死闘を繰り広げる中、昨季まで広島の投手コーチを務めた大野豊氏(57)が「カープ“投手王国”再建へ」(宝島社刊)を上梓。
“強いカープ”への道筋を提言した。
「現在のチームは、15年連続でBクラスに低迷するなど、カープファンには寂しい思いをさせ続けています。強い時代は遠い記憶となり、“カープは弱い”というイメージしかありません。どうにかCSに出てほしいです。『広島の選手に短期決戦を経験させたい』という思いをこの本に託しました」
大野氏といえば、球界史上に燦然たる成績を誇る名投手。史上6人しかいない100勝100セーブを達成し、今年、野球殿堂入りを果たしたばかり。
そんな大野氏の目には、現在の広島からは、「投手王国復活」の手応えを感じるという。
現在のところ、先発4本柱は、前田健太(25)が7勝5敗、野村佑輔(24)が5勝3敗、大竹寛(30)5勝6敗、バリントン(32)が4勝8敗。4人合計で借金1だが、防御率は大竹だけが3点台に甘んじているものの、他の3投手は2点台と健闘している。
「今や球界を代表する投手となったマエケンには何も言うことはありません。コーチ時代、彼にはスライダーの使い方やオフシーズンの過ごし方など、さまざまなアドバイスをしましたが、しっかりと吸収してくれていますし、成績も残すでしょう。野村に関しては、昨年1年しか見ていませんが、彼には独自のペースがあり、投手としてしっかりしたスタイルを持っています。1年間プロで経験を積むうえで、諸々の課題も出てきましたが、取り組む姿勢もありますから、あとは本人しだい。
オールスター前に“らしくない”ピッチングが続いた大竹ですが、彼の持ち味は試合を作ること。今は落ち込んでいるかもしれませんが、故障を経験して技巧的な面も出てきたので期待していいのではないでしょうか」
大野氏は、若手先発陣の成長こそが、チーム復活の切り札になると見ているのだ。