「おっ、何だ? ゾマホンからだ」
つい先日、都内某所で殿と雑談をしていると、不意に殿のiPhoneが鳴り、ディスプレイを確認した殿は、冒頭の言葉を漏らしながらスピーカーに切り替え、付き人であるゾマホンの電話に出たのです。
で、殿は1年程前から、ゾマホンと交わす会話は語学勉強のため、原則全て英語でしかしないと決めています。
ちなみに、ゾマホンは英語のほかに、フランス語、中国語、日本語、そして母国のベナン語と、5カ国語をしゃべることができるのですが、そんなゾマホンに殿は「オイラの英語の専属教師」として、毎月給料を払っています。
この日の会話も、電話をかけてきたゾマホンが、まずは何やら英語で殿にあいさつをするところから始まったのですが、殿はゾマホンのあいさつが終わるとすぐさま「アーユー、ボビー・オロゴン?」と、この電話の前日に「妻を殴って逮捕!」の一報が流れたタレントの名を口にし、ボケたのです。
聞かれたゾマホンは、かなり慌てた様子で「ノノノノーノーノー! わわわわたくしは、ボビー・オロゴンではなく、ゾゾゾゾマホンです」と、英語で大真面目に返していました。
そんな殿の電話口でのボケを聞いていたわたくしは、改めて〈抜群のタイミングで放つ、殿の時事ネタボケは、本当に痛快である〉と、うれしくなってしまったのです。今のテレビではもう絶対にできませんが、かつて殿はよく、
「どうも、川俣軍司です」
「どうも、一柳展也です」
と、その当時世間を騒がせ逮捕された人物の名を誰よりも早く口にする“名前ボケ”を、テレビの中で好んで多用していました(名前を出した2人が何をしたかは各自検索してください)。
で、殿がその時々で放つそれらの時事ネタボケは、しつこいようですが、とにかく聞いていて気持ちがよく、「待ってました!」とテンションが上がります。
で、近年、わたくしの中で“殿、それ、待ってました!”と、1人勝手に喜んだ“たけちゃんの時事ネタボケ”といえば、2年程前、爆笑問題の太田さんが、某週刊誌に〈出身大学である日大芸術学部入学は、親が金を払った裏口入学であった〉と、デタラメなスクープを報じた最中に開催された、爆笑問題のライブに殿が寄贈した祝花に添えた「どうも、あの時お世話になった日大の者です」が最高でした。きっと、爆笑問題のライブに来たお客様も、殿のコメントを目にして、ニヤニヤしたことでしょう。
そういえば殿は以前、相棒のビートきよし師匠が地元・横浜に焼肉ダイニング「よしなさい(言わずと知れた、きよし師匠のツッコミフレーズ)」をオープンさせた時も祝花を贈り、そこにはしっかりと「やめなさい!」と、コメントを寄せていました。とにかく、殿が放つ時事ネタボケを、わたくし、いつだって待ちわびているのです。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!