お盆の時期になると、殿がわりと好んで話す、こんな話があります。
「こないだ久しぶりにかあちゃんの墓参りに行ったら、なんか黒い影が、墓の前で動いたんだよ。うわっ! 何だ? お化けか? ついに出たか? 『かあちゃん、ごめん、ちゃんと墓参り来なくて‥‥』なんて言って恐る恐る近づいていったら、ゾマホンだった。あの野郎、俺にお世話になってるからって、たまにかあちゃんの墓に来て、掃除してやがったんだよ」。
15年程前、タレントとしての仕事がまったくなくなったゾマホンが、生活に困窮していました。すると殿は、「だったら俺の弟子になって、しばらく食いつなげばいい。一応、通訳ってことで、今月からお前に給料を出すから」と、英語、フランス語、中国語、そし日本語と、語学が堪能だったために、付き人兼通訳として雇ったのが始まりで、アフリカのベナン共和国出身のゾマホンは殿の弟子になりました。
そして、殿の付き人を10年程務めあげ、なんとか食いつなぐと、運も味方し、晴れて「駐日ベナン特命全権大使」に任命され、一旦、殿の元を離れ、4年の任期を務めあげたのです。
で、去年、大使の任期を全うして無職になったゾマホンは、また殿の“出戻り付き人”として奮闘中です。
そんなゾマホンは、日本で稼いだお金と、殿からの多大なバックアップのもと、まだまだ貧しい母国ベナンに、小学校を7校建てた、なかなか立派な“出戻りボーヤ”だったりします。
ちなみにゾマホンの口癖は「じじじ、人生甘くないよ。殿はわたしのかかかか、神様だよ」です。
で、つい先日、殿からかなり唐突に、
「今度よ、ゾマホンの人生を小説にして出そうかと思ってんだよ。それでちょっと、あいつから話聞くから、北郷、お前、1回ざっとまとめてくれよ」
と、アフリカの小さな国の、水道も電気もない、土壁と藁ぶき屋根の家が立ち並ぶ集落から、勉強が恐ろしくできたため、ベナンの国立大学を卒業後、国費で中国の北京大学へ留学し、そこから日本へたどり着いて、ひょんなことからタレントになり、そしてビートたけしの弟子になるという、数奇な運命をたどった人生を小説の形で発表すると宣言したのです。さらに、
「最終的にはカメラ回して、あいつのドキュメントを作ってもいいしな。あとほら、昔、ゾマホンに文金高島田のかっこさせて、顔を白塗りにして、『ゾマやっこ(芸者)』って名前付けて、相撲やらせたり、騎馬戦やらした映像あったろ? あれをドキュメントで使ってもいいしな」
と、かつて、深夜番組で放送した、放送コードギリギリの、かなりブラックなネタを思い出す殿なのです。ちなみに、「ゾマやっこ」企画の最後は、ゾマホンの手足を縛って、プールに叩き落とすという、なかなかハードな展開のエンディングでした。とにかく、書籍&映像と、殿が伝える「ゾマホン物語」始まります。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!