芸能

天才テリー伊藤対談「佐藤蛾次郎」(1)俳優になって金と仕事の苦労がない

●ゲスト:佐藤蛾次郎(さとう・がじろう) 1944年、大阪府生まれ。53年、「大阪朝日放送児童劇団」に入団。61年のドラマ「神州天馬侠」(フジテレビ)に出演、この時の役名「蛾次郎」を芸名にする。68年の映画「吹けば飛ぶよな男だが」で山田洋次監督に見いだされ、同年スタートのドラマ「男はつらいよ」(フジ)、そして69年からスタートした映画「男はつらいよ」シリーズ(71年の第8作「寅次郎恋歌」を除く49作)に出演。現在は俳優業のほか、東京・銀座でカラオケパブ「Pabu蛾次ママ」を経営。名物の「寅さんカレー」が人気。7月8日、「男はつらいよお帰り寅さん」のDVD/Blu-ray(松竹)が発売。

 国民的人気を誇る「男はつらいよ」で寅さんを「兄貴」と慕う名物キャラ・源公を演じてきた佐藤蛾次郎。シリーズ最新作「お帰り 寅さん」DVD発売のタイミングを迎え、渥美清、山田洋次監督との思い出から自身のプライベートまで、天才テリーに余さず語り尽くした!

佐藤 (椅子に座ろうとして)イテテテテッ。

テリー どうしたんですか。

佐藤 いや、4~5日前に自分の部屋で立ち上がった時に滑って、トランクの角で思いっ切り腰打っちゃった。医者へ行ったら「折れてます」だって。

テリー ええっ、大変じゃないですか。

佐藤 大丈夫。気をつけなきゃね、年取ったら。俺も75だもん。どっかで会っていませんでしたっけ。

テリー 蛾次郎さんとお会いするの、初めてです。

佐藤 そうか。こんな男ですけれど、何でも話しますから。

テリー アハハハ。さっそくですが、プロフィールを見て驚きましたよ。歯医者さんの家に生まれて、しかも11人兄弟の10番目。

佐藤 自分で言うのも何だけれど、若い頃は親父に「お前は頭がいいから、俺の跡を継げ」なんて言われたこともあった。でも、勉強するのは嫌いだったからね。

テリー で、9歳の頃に児童劇団に入って。

佐藤 そう、朝日放送児童劇団。おふくろに連れられて行ったら、なぜか受かっちゃった。そこでずっと、演技の勉強なんかをしていたんです。

テリー そこから子役として活躍するようになって、フジテレビのドラマ「神州天馬侠」(61年)に出た時の役名から「蛾次郎」をもらったんですってね。

佐藤 そうそう、「泣き虫蛾次郎」という役でした。僕の本名は佐藤忠和なんですが、監督が「その名前は役者らしくない。蛾次郎をもらえ。こんないい名前はないぞ、なんといっても吉川英治が考えたんだぞ」なんて言われてね。

テリー ハハハ、吉川英治さんが原作のドラマだからね。確かに印象には残る名前ですけど、抵抗はなかったんですか。せっかくつけるんだったら、もっと二枚目ぽい名前のほうがよくないですか。

佐藤 どうせ役者になるんだったら、目立つほうがいいからさ。あと、泣き虫蛾次郎も本当にいいキャラクターだったので。それからあとも、NHKのドラマでよく使ってもらえたし。「開化探偵帳」(68~69年)は明治時代の刑事役を演じたんだけど、わざわざ原作・脚本の島田一男先生がリハーサルに来てくれて「頼むぞ、蛾次郎くん」と声をかけてくれたのがうれしかったなァ。

テリー しかし聞いていると、トントン拍子で順風満帆な人生ですね。

佐藤 そうなんですよ、ホント、恵まれている。医者の息子だからお金に困ったこともないし、子役時代からずっと仕事も続いているから、芸能界の苦労話もないんですよ。

テリー 意外というと何ですが、どうしても蛾次郎さんは「男はつらいよ」の源公のイメージが強いから、どうも調子が狂っちゃいますよ。

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