女性たちの秘め事には生々しい愛憎と体への欲望がほとばしる。その情景をみごとに活写した昭和の名画は多い。中には艶ビデオ顔負けのハードな場面も…。本誌厳選の作品群を以下─。
「男女のカラミよりも、女性同士の情事は、より『秘めたるものを見てしまった』という感覚が強く、興奮度が増しますよね」
と話すのは、映画評論家の秋本鉄次氏。多くのベッドシーンを鑑賞してきたが、最も脳裏に焼き付いているのは「吉原炎上」(87年、東映)での百合シーン。名取裕子が二宮さよ子の「遊女レッスン」を受ける場面だ。
真っ赤な寝具が重なった布団部屋で、真紅の襦袢にはかなげな美胸をあらわにした名取。つい情愛を覚えてしまった二宮は、緊張感で身を固める名取を後ろから抱きしめた。そして、ゆっくりと胸を弄ぶ。さらに、首筋や耳、そして硬くなった胸の先端に舌をはわせると、ついに名取も女同士の快楽に身を預けてしまう。
「教えるつもりが、二宮は本気になって愛撫するのですが、非常にねちっこくてソソられました」(秋本氏)
ベッドシーンの巨匠・五社英雄監督作だけに、そのシーンは3分間にも及ぶ。実に“濃い”のである。
一方、ベッドシーン事情に詳しい映画ライターの松井修氏が太鼓判を押すのが「卍」だ。谷崎潤一郎の同名小説を原作に、これまで4度も映画化されている。
中でも、83年の映画「卍」(東映)が、最も艶っぽさの香り高く、「日本文学史上最高の」(松井氏)百合作品を再現したと評された。松井氏によれば、樋口可南子と高瀬春奈が、お互いに下半身用の肌着1枚の姿で、キスをしながら下半身に手を伸ばす「本格的な」百合絡みを見せているという。
既婚者役の高瀬が出来心から万引きをする場面を、OL役の樋口が目撃。万引きがバレると、刑事の夫が職を失いかねない。されるがままに、高瀬は樋口に体を許す。
「初めて百合関係を結ぶ際に樋口が片方の胸を出して『吸うてみる?』と誘うのですが、その場面は非常に艶っぽかったですね」(芸能記者)
その後、2人は逢瀬を重ね、樋口がタバコ片手に高瀬の愛撫に身を委ねるシーンはアンニュイの極みだ。
「スレンダーな樋口と、豊満な高瀬のコントラストがもうたまりません」(松井氏)
百合関係を描いた作品をひもとけば、古くは60年代から存在した。先の「卍」が最初に映画化されたのは64年のことだ。とはいえ、ハードな場面はなく、百合シーンには厳しい時代が続いた。そんなご時世にあって貴重な作品と言えるのが「阿寒に果つ」(75年、東宝)だろう。五十嵐淳子(68)がお椀型のバストを初披露しただけでなく、百合シーンを演じたのだ。前出の秋本氏によれば、「吉原炎上」で名取に手ほどきした二宮が、この作品では五十嵐に“レッスン”。年上女性という立場から「こういう愛もあるのよ」とばかりに、「口づけを交わす」のだという。
やはりより刺激的な百合関係を本格的に描いた作品は80年代になってから。「四季・奈津子」(80年、東映洋画)は公開前から話題沸騰した。烏丸せつこと阿木燿子のW脱ぎシーンのみならず、レズシーンも見られるとあって、試写室での盗撮を阻止すべく、持ち物検査を実施したほどだったという。
ツンと上向く完璧な釣り鐘型の爆裂バストと、なまめかしい曲線を描くクビレ。圧倒的なボディの烏丸を自室のベッドにうつ伏せにさせて、全脱ぎ姿の阿木がマッサージでさするような手つきで背中に触れ、そのまま折り重なる。
「心臓の鼓動、合わせみようか」
そんな阿木のセリフがロマンティックな妖艶さを漂わせる場面は、令和の現代においても垂涎モノとなっている。