かゆみや痛みを伴わない赤い斑点が腕にあらわれた時、それは「クモ状血管腫」かもしれない。
これは、皮膚にあらわれる鮮やかな赤色の、直径針頭大から1センチ程度の小さな斑点のこと。中央の細動脈から多数の細く蛇行した毛細血管が遠心状に広がり、クモの脚のように見えることから、そう呼ばれている。指で押して圧をかけると、赤い色が消失するのも特徴だ。
たかが「赤い斑点」と侮ってはいけない。実は、肝硬変など肝機能が低下しているサインでもある。斑点が1つか数少ない場合は、さほど心配はいらない。注意したいのは、クモ状血管腫が腕などに多数発生して、強い倦怠感やむくみ、発熱、黄疸などの症状が見られる場合だ。この際にはすぐに医療機関を受診してほしい。「肝硬変」を発症している可能性もあるからだ。
ちなみにクモ状血管腫自体は、肝機能に異常が見当たらなければ治療も特に必要ない。見た目上、気になる場合は、レーザー療法などを行うことになる。
赤い斑点は、じんましんなどの湿疹でも発症するので、見分け方もポイントとなる。じんましんの場合は、さまざまなアレルギーやストレスが引き金となり、かゆみを伴う赤い膨らみが突然皮膚にあらわれ、数時間以内に消えるのが特徴だ。クモ状血管腫の場合は痛みやかゆみを伴わない。主に上半身に発症して。毛細血管が放射状に浮かび上がって、徐々に大きくなっていくケースが多い。
クモ状血管腫は前述のとおり、肝機能の低下で発生するケースが多いため、日頃からアルコールを過剰摂取している人や、脂肪分が多い食品を食べている人、運動不足の人にも起こりやすい。赤い斑点は沈黙の臓器といわれる肝臓が発する、ありがたいサインでもある。アルコールの過剰摂取など、思い当たる人は内科、消化器内科を受診してほしい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。