スポーツ

掛布雅之「CS広島戦を制する打順とローテ」vol.2

短期決戦ではミスが命取り

 上本がダメだとすると、僕が望むのは右手骨折で登録抹消された大和の復帰です。彼の足はもちろん、守りの面でも阪神にとって外せない絶対的な武器。理想は彼を開幕オーダーと同じ2番センターに充て、守備と走塁を固める。

 短期決戦は1つのミスが命取りです。どのチームも敵の失敗を待つのがCSの基本的な戦い方なのです。その意味では今シーズンの成績を見ているかぎり、大和にセンターを守らせるのがいちばん無難です。

 問題は大和がCSに間に合うかどうか。これも阪神と広島の勝敗を分ける要因になるでしょう。

 不安材料は他にもあります。福留のライトの守備です。左ふくらはぎのケガから復活したばかりの彼が、いつまたケガをするかわからない。彼がこのままCSまで無事に試合をこなしてくれれば、外野は安定するわけです。

 また、打順では1番にふさわしい上本ですが、サードの守備は安心できません。8月29日の巨人戦でも彼は失策をしています。僕はサードは不慣れな上本ではなく、まだ守りの堅い坂を守備要員として、打順は7番あたりでスタメン起用し、試合中のミスを一つでも減らしていくことに意識を持っていく必要があると思います。点が欲しいからといって守りをおろそかにする打線は、短期決戦においては自殺行為なのです。

 そして次に求められるのが投手陣のふんばりです。以前も言ったとおり、対広島で鍵となるのは前田健太。彼は広島の絶大な武器でありながら、その存在感ゆえに打ち崩した時のチームのダメージは大きい。考え方を変えれば弱点にもなりうるのです。

 しかしながら、今年の前田に対する阪神のやられっぷりを目の当たりにすると、阪神打線が彼から大量点を奪うのはやや現実味に欠ける。しかも、ここに来て野村祐輔にバリントン、ミコライオと前田以外の投手も勢いに乗っていて、今の広島の投手力は阪神をしのぐものがあります。

 となれば阪神は、攻撃勝負ではなく、広島の打線を抑えることが先決になります。広島は誰が投げてこようと初戦には必ず前田を入れてくるはず。対する阪神は1戦目にメッセンジャー、2戦目に能見篤史、3戦目にスタンリッジか、広島に2勝0敗と相性のいい藤浪晋太郎が最善です。スタンリッジは9月23日のヤクルト戦でも完封勝利するなど調子がいい。

 もし、初戦の前田に勝てれば、2戦目の能見で一気に畳み込めます。もし、1勝1敗で折り返したとしてもスタンリッジ、藤浪の2人が9回を投げ分ければ投手力としても申し分ない戦力です。

 さらに欲を出すなら、能見を広島戦では投げさせずに、2戦目に藤浪を入れるという手もあります。もし、このローテで広島に勝つことができれば、巨人戦での大事な初戦を能見で迎えられることになります。あとに続く巨人戦を見据えると、このローテも十分に通用するはずです。

 相手のミスを待って、投手力で抑える。阪神がこの2つを完璧にこなすことがCSを勝ち抜く絶対条件。万全の態勢でCSに向かうために、選手や首脳陣はもう一度、気持ちを入れ替えて、残りのシーズン戦に臨んでもらいたいです。

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