月間18勝と、4月の球団記録を作った阪神ですが、大きなアクシデントに見舞われました。上本が5月3日のヤクルト戦(神宮)の4回、雄平のライナーを右手親指に当てて、骨折してしまったのです。不規則な回転のライナーを大事に捕ろうと、右手を添えていたのが、最悪の結果につながりました。復帰には最低でも1カ月以上はかかるでしょう。
またしても二塁手が消えてしまいました。開幕二塁の西岡が3月30日の巨人戦(東京D)で、打球を追って右翼・福留と激突。肋骨の骨折などで戦線を離脱し、4月末からようやくリハビリを開始したところです。
上本は「1番・二塁」として、西岡の穴を埋める以上のプレーを続けていました。打率3割3分6厘で、28得点は鳥谷に次ぐリーグ2位。もともとパンチ力のある選手でしたが、今季はバットをひと握り短く持ち、ミートを心がけた打撃に徹していました。二塁の守備範囲も広く、どれだけ投手陣を助けたことでしょう。4月の陰のMVPで、西岡が復帰しても二塁の定位置は簡単には渡さないほどの存在感でした。
野球にケガは付き物ですが、チームにとっては大きな痛手です。もちろん、本人がいちばん悔しいことでしょう。
昨季もキャンプ、オープン戦と絶好調のスタートを切りながら左足首を痛め、前半戦を棒に振りました。その前年の2012年も左肘を痛め、開幕一軍を逃しています。大事なところでケガに泣かされ続けている選手なのです。
チームにとっては試練の時を迎えました。和田監督は5月4日のヤクルト戦(神宮)から4年目の荒木を一軍登録すると、8番で先発起用。1番には、それまで2番を打っていた大和を起用しました。
荒木は私も二軍で一緒に汗を流してきた選手で、胸を張って一軍に送り出せる状態です。レベル回転のスイングを身につけ、昨季までは点でボールを捉えていましたが、線で捉えられるようになりました。実際にウエスタン・リーグでは打率4割4分4厘(36打数16安打)の好成績を残しています。二塁の守備も安定していますし、足も速いですから、1番に抜擢するのもおもしろいでしょう。
そもそも、今季は1番・鳥谷、3番・西岡というのが打線の肝でした。四球が多く出塁率の高い鳥谷をトップで起用し、勝負強い西岡をゴメス、マートンの両外国人の前に置くという狙いです。西岡のアクシデントで鳥谷を昨季同様の3番に戻しましたが、実はこの策には一抹の不安を抱いていました。3番には今成や新井良を据えて対処するべきで、開幕前に決断した鳥谷の1番は動かさないほうがいいと思っていたのです。結果的に打線は機能しましたが、ここまではできすぎの面がありました。
しかし、もう一度鳥谷を1番に戻すというのは、大きなリスクがあります。好調の4番・ゴメスの打撃のリズムを崩す可能性が高いからです。クリーンアップを打つ打者というのは、前後の打者に強い影響を受けるものなのです。
(数字は全て5月6日現在)