チームでは長年、抑えを任されてきた岩瀬が年齢的な衰えを隠せなくなっています。ここ2、3年の中日の低迷は岩瀬、浅尾の不振が要因の一つでした。今季の経験を生かして福谷がさらに一皮剥ければ、9回の3つのアウトから逆算する中日の野球を再構築できるはずです。福谷とともにリリーフでフル回転した新人の又吉も力のある投手。浅尾が復活すれば、12球団屈指の勝利の方程式を作ることができるはずです。
ただ、中日の来季の巻き返しは、プレイングマネジャー・谷繁の立ち位置が大きく影響すると見ています。今季も正捕手として90試合以上に出場しましたが、負担の大きさは否めません。打率も2割を切ってしまい、レギュラーを張るには苦しい成績です。来季は監督業を優先して、マスクをかぶるのは優勝争いの勝負どころの数試合に限定するほうがいいのではないでしょうか。恐らく、落合GMも捕手の補強を考えていることでしょう。
谷繁が切り札的な控え捕手となった時に、Aクラス復帰が見えてくるはずです。
パ・リーグに目を移せば日本ハム・大谷が二刀流で鮮烈な輝きを放ちました。日本球界初、メジャーでもベーブ・ルースが達成して以来の2桁本塁打(10本)、2桁勝利(11勝4敗)をマーク。レギュラーシーズン最終戦となった10月5日の楽天戦(札幌D)では、公式戦の日本球界最速タイとなる162キロの剛球を披露しました。チームは3位ながら、今季のMVPに推す記者もいるでしょう。
個人的な意見としては、大谷は来季以降、投手に専念したほうがいいと思います。将来的にメジャーに挑戦する意思が強いのなら、投手として世界一を目指すべきではないでしょうか。確かに二刀流のメリットはあります。打者目線は投球術に生かされるはずですし、守備に就く際のベンチからライトへの往復、出塁してのベースランニングは、自然と下半身強化につながっているはずです。
ここまではプラスに作用した二刀流ですが、ここから先、超一流を目指すには足かせになる可能性が高いと見ています。しかし、常識では測れないスケールの選手です。どういう野球を目指すのか、彼自身がよく考えて、ベストの選択をしてもらいたいものです。
チームとして驚かされたのはオリックスの躍進です。私をはじめ、野球評論家の開幕前の予想は総じてBクラスでした。それが、大本命のソフトバンクを最後の最後まで追い詰めたのです。ソフトバンクの優勝が決まった10月2日の博多決戦。松田のサヨナラ安打に捕手の伊藤が泣き崩れたシーンが胸を打ちました。
来季、阪神が10年ぶりのリーグ優勝を目指すうえで必要なのは、そういう「熱さ」なのかもしれません。プロとプロの勝負であっても、最後の決め手となるのは、ハートです。球団創設80周年となる来季は「猛虎魂」という言葉が似合う戦いを期待したいと思います。
阪神Vのための「後継者」育成哲学を書いた掛布DCの著書「『新・ミスタータイガース』の作り方」(徳間書店・1300円+税)が絶賛発売中。