巨人の阿部が大きな決断をしました。来季はマスクをかぶらず、一塁に専念するというのです。15年のセ・リーグのペナント争いを大きく左右する事象となりそうです。
松井が03年からメジャーに戦いの舞台を移し、ここ10年は阿部が「巨人の顔」でした。今季の年俸はNPBトップの6億円(推定)です。打てる捕手として、チームのみならず日本球界を引っ張ってきました。ですが、彼も来季は36歳になります。年齢的な面を考えても、捕手と4番打者の2足のわらじは限界に来ていました。
衰えは打撃より守備面のほうが深刻だったのかもしれません。今年の阿部の盗塁阻止率は2割7分3厘でした。昨季の3割6分8厘から1割近くも落としてしまいました。盗塁阻止率は3割で合格ラインと言われています。06年には4割4分3厘という高い阻止率を誇った強肩にかげりが見えていました。厳しい言い方になりますが、「捕手・阿部」は賞味期限が近づいていました。このままなら、あと1年、2年でユニホームを脱いでもおかしくなかったでしょう。
一塁に完全転向となれば、40歳までプレーできる可能性が出てきます。そのための条件としては、もう1回徹底的に走り込んで体をしぼることです。大きくなりすぎていた体をスリムにすれば、膝などの下半身の負担が減りますし、何より体の切れが出てくるはずです。今季は開幕前に首を痛めて打撃のリズムを崩し、そのままズルズルとシーズンを過ごした感じがします。ダイエットに成功し、体調さえ万全で臨めば、本来のバッティングを取り戻せると見ています。
打撃に専念した場合、どれぐらいの数字がノルマとなるのでしょうか。一般的には3割30本100打点というのが目標ラインかもしれません。でも、私は数字にはこだわらなくていいと思っています。もちろん、今年の寂しい成績、打率2割4分8厘、19本塁打、57打点は上回らないといけませんが、4番打者としてチームを優勝に導けばそれでいいのではないでしょうか。試合数も全試合にこだわらず、体調を考慮しながら100~120試合でベストの状態で打席に立ち続けることを考えるべきです。
今年の巨人を振り返ってみると、開幕4番の村田が4月下旬に降格して以降、まったく固まりませんでした。アンダーソン、セペダ、長野、高橋由と試され、結局は8月から阿部に落ち着いたのです。原監督も阿部の4番でないと打線が落ち着かないと感じたはずです。来年も数字どうこうより、4番打者としての存在感を示すことが求められているのです。阿部がこだわらなければいけないのは日本一です。チームが日本一になって、「日本一の4番」と言われればそれで十分でしょう。逆に一塁に転向しても4番で機能しないようであれば、「引退」という二文字がよぎります。いずれにしろ、阿部にとっては勝負の年となります。
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