「心身ともに清らかな状態で参るために禊〈みそぎ〉を受けるのも一つの方法」との情報は、ガイドブックから抜け落ちている場合がままある。
「例えば、二見興玉神社〈ふたみおきたまじんじゃ〉で受けられる、海水を使った禊修法。古来より神宮の参拝者が二見興玉神社から二見浦〈ふたみのうら〉の浜に降り、禊を行う慣習がありました。日の出に合わせ、太陽を拝みながら海水で身を清めるのです。事前に申し込みをしておけば、誰でも受けられます」(井上氏)
もう一つ、本誌が勧めるのは別宮参拝。ガイドブックにも「行くといい」とは書いてあるが、やはり内宮と外宮に比べて情報量が極端に少なく、ないがしろにされている感は否めない。
「ご利益にあやかりたいなら、内宮と外宮だけでなく、他の神域にも目を向けてほしい。ただし、スタンプラリーのように神宮125社を全て回ろうという野心はよろしくない。それこそガイドブックなどを見て、気になった神様を中心に数社、ゆったりと参るのがいいでしょう」(井上氏)
例えば、月読宮〈つきよみのみや〉。曲がりくねった参道は神秘的で、境内全体が深い森に包まれている。一つの神域に4つの別宮が横一列に整列し、向かって左側から伊佐奈弥宮〈いざなみのみや〉、伊佐奈岐宮〈いざなぎのみや〉、月読宮、月読荒御魂宮〈つきよみのあらみたまのみや〉。親子神を同祀している神社はなかなかない。参拝順序は月読宮→月読荒御魂宮→伊佐奈岐宮→伊佐奈弥宮だ。
伊雑宮〈いざわのみや〉は内宮の別宮。伊勢市駅から約40分の上之郷駅から歩いてすぐの場所にある。宿衛屋のそばに「オバケカボチャの木」とでも呼びたくなる樫の木が生えており、神気を吸った影響なのか、根元がこんもりと膨れ上がっているのだ。
さて、ガイドブックといえば、観光スポット、グルメ情報も欠かせない。ところがこれまた、ダマされてはいけない情報が満載だ。
「伊勢は海の幸、山の幸に恵まれていて、何でもうまい」と地元商店主は胸を張るが、こうも話すのだ。
「ただ、最近は旬を知らない人が増えた。例えば伊勢志摩で獲れる伊勢海老は、4~8月は禁漁で、9月から漁解禁となる。つまり9月~3月に食べるものが、伊勢志摩で獲れた正真正銘の活き伊勢海老。それ以外の季節は冷凍、輸入モノと考えたほうがいい」
アワビも要注意だ。旅行ライターによれば、
「旬は7月から8月。地元の漁協で会った海女さんも『夏に食べるアワビが一番』と口をそろえます」
海産物は必ず旬を押さえるのが基本。「伊勢名物を一度に全部味わえる」と都合のいいことを言う店は、地のモノを出していない可能性が高い。伊勢グルメのつもりが韓国グルメだった‥‥なんてことも起こりうるのだ。
なお、おかげ横丁にあるかの有名な「赤福」が月替わりで限定販売する「朔日餅」は、深夜3時から行列ができる異常な盛況ぶりだが、これはあくまでお土産用であって、中で食べる人はその必要なし。それを知らずに並ぶ人がいるというから気の毒な話である。