武田鉄矢とデュエットしたCMは、芦川よしみ(61)の色香を再認識させた。ところが、自身は大ヒット作に意外な難色を示していたという‥‥。
──CMとしての代表作は、いずれも酒に絡んだものでした。まず、サワーという言葉を定着させた博水社の「ハイサワー」(83年)、そして武田薬品の「タケダ胃腸薬21」(86年)ですね。
芦川 ああ、そっか、私自身はお酒をほとんど飲まないんですけどね。
──まず「ハイサワー」から。8年かけて全部で6パターンほど夫婦のやり取りが展開されましたね。
芦川 第1弾は私がバニーガールに扮して、主人のお風呂に「あなた~☆」って入っていくバージョン。網タイツにウサギの耳をつけて頑張りました(笑)。
──体を張っていましたねえ。そしてヒットフレーズになったのが、酔って帰って眠りこけているダンナに「お客さん、終点だよ!」って駅員のフリをする。それでダンナがお寿司の折詰を持ったまま、ガバッと飛び起きる。
芦川 あれは博水社の社長さんが、現場で「飲んだら寿司を買って帰らないと女房の機嫌が悪いんだ」とおっしゃったことがヒントになったんです。
──なるほど、社長みずからヒット作をプロデュースしていたんですね。そして「タケダ胃腸薬21」です。世の中がカラオケブームの絶頂期ということもありましたが、色っぽい表情で「飲みすぎたのは、あなたのせいよ」と、ささやくように歌う。世の全ての男たちが言われたい名フレーズでした。
芦川 作詞の魚住勉さんは浅野温子さんのご主人ですが、当時から売れっ子のコピーライターでした。だから短くてキャッチーな歌詞を書けたんでしょうね。
──当時は女優のイメージが強かったですが、もともとは76年のレコード大賞新人賞にも選ばれた歌手。歌う場面はお手のものだったのでは。
芦川 いいえ、20人ほどのオーディションだったのですが、歌うのならお断りしようかと思ったんです。
──新人賞を内藤やす子やピンク・レディーと争った歌手の実績がありながら、なぜ?
芦川 私は演歌系でしたので、仕事は夜の営業が中心になるんです。地方のグランドキャバレーで歌うとどうしても酔ったお客さんに触られるようなことが多く‥‥。それよりも全員で作り上げる女優の仕事のほうに喜びを感じていました。
──いや、あのCMも「チーママを演じる」という部分で女優だったと思いますよ。
芦川 ありがとうございます。ただ、あのフレーズを聞いたら一瞬で「あ、これは売れる!」と思いましたね。
──ところが、武田鉄矢とのコンビでは発売されず、別のペアが何組も「競作」として名乗りを上げた。
芦川 武田さんが「自分の作った歌以外はちょっと」とおっしゃったんですが、翌年の「男と女のはしご酒」は、ようやく武田さんとレコード発売。あの「ザ・ベストテン」(TBS系)にもランクインして、武田さんは福岡、私は京都、それに東京のスタジオを結んで3元中継で歌ったこともあったんですよ。
──レコードのヒットは、本来の胃腸薬の売り上げにも貢献したようです。