政治評論家の浅川博忠氏もこう話す。
「小泉氏の一連の発言は、安倍総理への進言であるとともに、自身の政治的影響力を取り戻すという意味合いもあるでしょう。政界引退後に、何度かお会いした時はオペラ、歌舞伎、ゴルフと趣味の話ばかりされていた。そうした生活を送る中で、政界引退表明から5年がたって、国民から忘れ去られていくのが嫌だったのかもしれません」
圧倒的な国民的人気を誇った元総理だけに、趣味三昧の日々では刺激が足りなくなったのだろうか。小泉氏を満足させてくれるのは、やはり政治しかないのかもしれない。
「現在の安倍総理は高支持率をキープしており、自民党内では絶対的な権力者となっています。自民党の中にも脱原発論者はいるのですが、安倍政権と正反対の政策を述べることができずにいます。そうした議員の中では不満がたまっていることは間違いないのですが、党を割って出て行くということは勇気がいることで、なかなか難しいでしょうね」(前出・浅川氏)
そこに、小泉氏の「新党構想」が実現すれば、自民党内の不満分子も勇気づけられるのは間違いない。小泉氏は野党再編だけではなく、政界再編の鍵さえ握りつつあるのだ。
この「新党構想」が現実のものとなるか否かは、安倍総理に小泉氏の提言が届いているかどうかにかかっている。前出・政治部デスクはこう話す。
「総理の下には福島の現状、つまりは原発の状態が正確に伝わっていないとも言われています。それは、秘書官の中で重用されているのが経産官僚だからです。その秘書官は『原発推進派』で、総理に原発情報を伝える際に、『おおむね問題ない』と必ず付け加えるというのです。そのため、安倍総理は本当に福島第一原発はコントロールできていると信じているといいます。今国会の所信表明演説でも、デフレ脱却、経済優先は鮮明になっています。原発に関しても、再稼働、原発技術の海外輸出という方向性に変化はないでしょう」
10月17日の国会での代表質問で、小泉氏の「原発ゼロ」提言が飛び出した。安倍総理はこう答弁している。
「エネルギーコスト低減の観点も含め、国として責任あるエネルギー政策を構築してまいります。原子力比率も可能なかぎり引き下げてまいります」
いまだ小泉氏が唱える「原発ゼロ」まで踏み切る様子がない安倍総理。10月末にも、小泉氏は都内で講演を行う予定になっている。そこで、さらなる厳しい提言が行われるかもしれない。そして、「脱原発新党」構想が加速する可能性もあるのだ。