小泉氏の「脱原発宣言」がクローズアップされる契機となったのは、8月26日付の毎日新聞に掲載された政治コラムだった。その後、小泉氏の講演の内容が盛んに報じられるようになると、真っ先に反応したのは野党側であった。
生活の党代表である小沢一郎氏(71)は、記者会見でこう語り、小泉氏の提言を歓迎した。
「首相を経験し、高い立場から考えて、原発はやめたほうがいいという思いに至ったのだと思う」
また、民主党の菅直人元総理(67)は自身のブログに、〈小泉元総理の原発ゼロ積極発言は大歓迎〉と記し、たびたび小泉氏の発言を取り上げている。
さらに、みんなの党代表である渡辺喜美氏(61)は、小泉氏と食事会まで開催している。
「ある結婚披露宴で熱っぽく『脱原発』を語る小泉氏を見た渡辺氏が声をかけて、みんなの党の勉強会の講師を依頼したそうです。小泉氏は『議員の前で話すのは断る』と話し、代わりに食事をすることとなった。ところが、実態は党所属の議員が集まる食事会ですから、結局は講師と変わらない。そうした動きが露呈してから、小泉氏が反自民勢力を結集して新党を作り、安倍政権を倒そうとしているのではないかという噂が永田町を駆け巡ったのです」(政治部デスク)
安倍晋三総理(59)の下、衆参のねじれを解消した自民党。一大与党を前に全野党はすっかり小政党となってしまった。野党再編が叫ばれるも、国会が始まっても各党の足並みはそろっていない。その現状に救世主のごとく現れたのが小泉氏だったということになる。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう話す。
「小泉氏の一連の『脱原発宣言』は安倍総理へ向けてのメッセージだと思われます。高支持率のまま消費増税まで成し遂げた安倍総理ですが、これからも自民党政権が続くためには、国民の支持を得られやすい『脱原発』に舵を切るべきだということです。一方で、総理に直言せずに、講演を通じて訴えるというのには別の意味もあるはずです。それは、この提言の意味を総理が理解できないとなれば、小泉氏も具体的な行動を取るということではないでしょうか」
かつて、小泉氏が自分の後継として担いだ安倍総理に対する厳しい提言でもあるのだ。
「ただ、小泉氏は議員に戻るつもりもなく、自民党以外の政党代表になるとは考えられない。最近では、小泉氏は脱原発派の細川護煕元総理(75)と連絡を取り合っているという情報もあり、そうした重鎮たちが触媒となって『脱原発勢力』を結集させる可能性はあります」(前出・鈴木氏)
小泉氏は議員としてではなく、あくまで「脱原発派」の精神的支柱となり、新たな野党再編の中で新党が誕生するというのだ。