源自身が標的となったのは、同時期にタモリがパーソナリティを務めた「オールナイトニッポン」でのこと。同僚の水谷から「遊びに来ませんか?」と誘われ、ニッポン放送を訪れた。
「そしたらディレクターが困った顔をしている。どうやら大阪からチンピラが乱入して、スタジオに居座っていると言うんだ」
源は闖入者〈ちんにゅうしゃ〉に外に出るよう諭すが、その男は激しく反抗。カッとなった源は男を引っぱたき、倒れたところで顔を踏んづけてしまう。あわてて入ってきたのがタモリで、実は番組の関係者だという。
「まんまと一部始終を録音され、その日のオンエアで流していた。よく考えたら一般人がスタジオまで入れるわけがないし、手の込んだドッキリだったね」
その代償として源は、ニッポン放送から「1年間の出入り禁止」を言い渡されてしまったと笑う。
また源は「スター誕生!」(日本テレビ)の構成も務めており、萩本欽一に次ぐ2代目司会者(80~81年)となったタモリとともに山形ロケに参加。そこで都市伝説のような場面に遭遇する。
さして遊びに行く場所もないので、ホテルの部屋でくつろいでいたタモリだったが──、
「突然、窓を開けて『犬の遠吠え』のまねをするんだ。そしたら、その声に呼応したのか、山形市内の犬が全部鳴き出したと大騒ぎになったよ」
もっと信じられない行動に出たのは、その「スタ誕」でも後期に審査員を務め、タモリのアルバムに参加したことから親しくなった小林亜星に誘われた一夜だ。小林の知人がママをやっている高級クラブに行き、何やら足止めを食っている。
「お前ら、ヒゲの殿下がいらしているから失礼なことをするなよ」
皇室きっての酒豪で知られた“ヒゲの殿下”こと三笠宮寛仁親王が来店している。小林が挨拶に行くと「知ってるよ」と言われ、ようやくタモリや源を引き連れて中に入る。
するとタモリが殿下に近づいて言った。
「殿下、オ○ンコって知ってますか?」
これにはSPたちもずっこけてしまい、大笑いの渦に包まれた。さらに意気投合したタモリは、殿下の車で自宅近くまで送ってもらったことを後々まで誇りにしていたという。
こうした無頼な日々は、昼の帯番組を持ったことで鳴りを潜めてしまった。活動の初期に共同作業をした源は、長寿番組となった「いいとも!」のタモリをこう評する。
「レギュラーでいえば笑福亭鶴瓶や明石家さんまのように、強烈な個性を発揮するわけではない。ただ、気がつけば全体の空気をタモリで包んでいるというのは、彼にしか出せない味」
それこそ「日本中」を静かに包んでいたのかもしれない──。