厳密にヤンキーな役ではないが、シリーズ名に「スケバン」とついたら悪の匂いがプンプン。第1作は斉藤由貴がヒロイン・麻宮サキに扮した「スケバン刑事」(85年、フジ系)だ。
「同じ85年4月に『夕やけニャンニャン』もフジで始まりましたが、現役女子高生のセーラー服とポニーテールの衝撃。さらに『てめえら、許さねえ!』と江戸っ子の口上。シビれましたね。2代目の南野陽子になると『おまんら、許さんぜよ!』と高知弁になるのが刺激的でした。原作者はナンノを『原作に一番近い』と絶賛していましたね」(芸能評論家・織田祐二氏)
3代目の浅香唯は、三姉妹という設定が目を引いたが、あまりに忍法帖テイストとなり、原作者が強制終了させたそうだ。
さて、ある種のヤンキー物と呼べるのが、江角マキコの出世作となった「ショムニ」(98年、フジ系)だろうか。会社の窓際部署・庶務二課に追いやられたOLたちが、胸のすく活躍で上層部の鼻を明かしてゆく。お笑い芸人のユリオカ超特Q氏が言う。
「江角の『女の価値は男の数で決まるんだよ』の締めのセリフも、男を敬遠しないという新しい形のヤンキー像。気っ風のいい姉御肌なキャラクターは同性にも支持されやすく、これを突き詰めれば『極妻』になるんでしょうね。女優たるもの、一度は演じてみたい役柄であります」
さて、いよいよ真打登場である。深田恭子との共演で大ヒットした「下妻物語」(04年、東宝)で、土屋アンナはレディースの一員・白百合イチゴを演じた。映画評論家の秋本鉄次氏が分析。
「ゴスロリファッションの深キョンとの対比が見事でした。土屋のように細面で鋭角的な顔立ちだと、こうも喧嘩上等のレディース役が似合うのかと感心しましたね」
前出・織田氏も手放しでの絶賛を惜しまない。
「オーディションで部屋に入ってきた段階で、中島哲也監督がイチゴ役に即決したそうです。刺しゅう入りの特攻服にサラシの巻き具合、原チャリでの暴走ぶりなど、公開後に高く評価された。土屋は日本アカデミー賞の新人賞にも輝きましたが、最大の勝因は、ほとんど地であったこと。土屋の『カメラの前にいても飲み屋にいても私は私』の名言を思い起こさせますね」
土屋とがっぷり四つで非情なオーラを放つのは真木よう子だ。沢尻エリカ、桐谷健太、江口のりこなどブレイク前の若手がひしめいていた井筒和幸監督の「パッチギ!」(05年、シネカノン)で、真木は朝鮮高校の女生徒役を演じている。前出・秋本氏が言う。
「沢尻とともに、抜擢された真木も世に出るべくして出てきたというタイミングでしょう。これを機に『月刊真木よう子』がベストセラーになり、翌年の『ベロニカは死ぬことにした』(角川映画)のフルマッパ熱演など、すべてヤンキー役から始まっています」
江口のりこらとつるんでケンカに明け暮れる役だったが、やがて、高校中退して看護師の道へ。
「ドスの効いた低い声と、パーマなのか地毛なのかわからないモジャモジャ頭にマスク姿のインパクト。看護師になって桐谷健太に飛び蹴りを食らわすシーンなど、実力派女優の才能が開花する片りんを見せました」(前出・織田氏)