就任したばかりの新GMが「オレ流改革」を炸裂させ、中日ナインを恐怖の底に陥れている。実績抜群のチームリーダーに非情な大減俸を通告した末にクビを切ったことが大騒動に発展。その裏には根深い怨念と確執が横たわり、決裂は必然の事態だったのである。
「もう大激震ですよ、これは。功労者に対して、いくら何でもあの金額でやれというのはひどいでしょう。普通は戦力外通告だと受け取ってしまいますよ」
東海地方のスポーツマスコミ関係者がこう言ってため息をつくのは、中日のチームリーダー・井端弘和(38)が電撃退団した一件を指してのことである。
11月4日に「井端とは来季の契約を結ばず、自由契約の手続きを取った」と中日が発表。契約更改で今季推定年俸2億5000万円から、なんと88%ダウンの3000万円を提示され、井端が即座に拒否したことで、両者の決裂は決定的となった。中日一筋16年、職人肌の通算1807安打、球界屈指の守備のスペシャリストに、このまま引退の可能性もささやかれる危機が訪れた瞬間だった。
「契約更改を主導しているのはもちろん、10月9日に就任したばかりの落合博満GM(59)です。西山和夫球団代表、査定担当者も同席しますが、球団社長いわく『落合GMは編成の最高幹部』ですからね。ただ、井端とは10月下旬に下交渉をしていますが、落合氏は井端には会っていない。落合氏の意向を西山代表が井端に伝えた形です」(球団関係者)
水面下での調整の段階だったが、まさかの金額提示を聞いた井端は茫然。これを受け入れることなく態度を硬化させ、秋季キャンプ開始の11月1日までには球場のロッカールームもきれいに片づけるなど、正式な契約更改交渉を待たず、退団の決意を固めたのだった。西山代表は、
「今日(11月4日)も電話で午前中まで何度も話を繰り返してきた。それでも本人の意志が固く、本当に残念だけど契約更新できなかった」
と苦々しく語っている。先のスポーツマスコミ関係者も、
「谷繁元信選手兼任監督(42)も慰留にあたったものの、翻意させられなかった」
条件闘争による決裂。プロ野球界では珍しくもない風景だが、落合氏と井端の間にはあらかじめ埋めがたい深い溝が生じていたことが今回の大激震を誘発した、との指摘があるのだ。だがそもそも、
「かつて井端は『落合の息子』と言われるほどで、落合氏も監督時代初期は井端を猫かわいがりしていた」(スポーツ紙デスク)
という蜜月関係だった。デスクが続ける。
「井端がまだ独身時代、V旅行を辞退したことがありました。V旅行は言ってみれば家族旅行みたいなもので、選手は皆、妻子を連れて行き、現地で子供を遊ばせたりして面倒を見ている。でも井端は1人では暇だからとの理由で、行かないことにしたんです」
◆アサヒ芸能11/12発売(11/21号)より