守備職人の“真の打力”にも話が及んだ。荒木は2000安打達成者としては史上最少の通算本塁打数だが、
「あいつがホームランを33本しか打ってないというのは不思議でしょうがない。でも、『1番2番で塁に出て足でかき回すのが、生き残る最善の策だろう』と考えて、ホームランを捨てたんだろうね」
絶対にもっと打てたはず。そう断言する根拠は、落合氏が監督を務めた11年のオールスターゲーム第1戦にあるという。先発は中日のリリーフエース・岩瀬仁紀(42)で、中継ぎ・抑え投手9人が1人1回を投げ抜く継投策が話題になったこの試合でのこと。全セが2点ビハインドの5回裏のベンチでのやり取りを明かす。
「『おい、ホームラン打ってこい』『いいんですか、じゃあ打ってきます』って、本当に打ったんですよ。あの広いナゴヤドームで。『荒木が打ったんだから俺だって打てるだろう』ってことで、この会話を聞いてた後ろのバッターも打っちゃって、同じイニングで4本ホームランが出たんだよ。俺が決められるんだったら、MVPは荒木にしていたな」
“オレ流節”はさらに続く。今季1割7分3厘(6月9日時点)と不調の真っただ中にあるマーリンズのイチロー(43)について、
「勝手なことを言うけど、簡単に直る。若い時に比べて、今はものすごく(打撃フォームの)動きが小さい。年を取ると動きをコンパクトにして対応しようとするけど、それで間が取れなくなっている。年を取ったら反対に、動きを大きくしないとパワー負けするようになる」
と、さすがの分析をしたかと思えば、話題を一転させて自身のレコードを発売した86年当時を振り返り、
「歌番組ではいろんな歌手の方と会った。小泉今日子さんに薬師丸ひろ子さん。今でも覚えているのは、楽屋でまだ小さい息子(福嗣)を抱っこしていた時、中森明菜さんに『かわいい、この坊や!』と言われたこと。なんていい人なんだと思って、それからファンになっちゃったからね」
硬軟織り交ぜた軽妙なトークに、会場からは拍手が起きる。
ただ、「オレ流の真実」とくれば、どうしても明らかにされていないGM時代の“裏側”の暴露を期待してしまう。それを見透かしてか、落合氏はこんな“牽制球”を投げてきた。
「GMという仕事をやって、あまりにも中のことを知りすぎた。これを語ると来週、再来週あたりの週刊誌に火をつけることになる。そのことには、一生触れることはないだろう」
ところが、こうも続けたのだ。
「まあ、あと10年くらいたったら‥‥皆さんが『あの時、何があったんだ』って。その頃にはしゃべってもいいのかな、と」
つまり“何かがあった”ことだけは確実なようだ。