田中のメジャー挑戦に関する問題は、ポスティングシステムだけではありません。実際に彼がメジャーに挑戦した時、はたして通用するのか。これが野球ファンの方々の最も気になる部分でしょう。
はっきり言って、彼の技術面、体力面を考慮すれば通用しないわけがない。しかもシーズン24連勝、昨年8月から今年のポストシーズンまでを含めて30連勝を飾ったことで、本人の中でも大きな自信となっているはず。
加えて日本の投手の武器は“落ちるボール”。メジャーの打者はこの日本人投手の“落ちるボール”をとにかく嫌います。
ワールドシリーズでみごとなストッパーぶりを見せつけた上原浩治も、スライダー回転やシュート回転のフォークなど、多彩な“落ちるボール”を使いこなす投手。だからこそ、彼は大事な場面でチームの勝利を託されるほどの絶大な信頼を勝ち得たわけです。
では、田中はどうでしょうか。彼も切れ味鋭いスプリットを決め球とする投手。メジャーでもこの得意のスプリットは文句なしに通用するはずです。
その反面、心配な部分もあります。それがメンタル面での弱さです。
日本ではバタバタと打者を抑える彼も、今年のWBCではほとんどの試合であまり調子がよくなかった苦い経験があります。大会の通算防御率も2.57と、彼らしくない数字でもありました。
テクニックやパワーでは決して劣るはずがない田中が、どうしてこれほどの苦汁を舐めたのか。もしかすると彼が外国人打者に対して、どこかで苦手意識を持っているからなのかもしれません。その意味では、彼がメジャーで失敗する可能性もないわけではない。
彼がいかにWBCの成績を引きずらずに気持ちを保って投げられるか。それがメジャー成功の大きな鍵となるでしょう。
一方で、現在のメジャーで活躍するほとんどの日本人選手が投手というのも少し寂しく思います。確かに、今の日本球界を見渡してもメジャーに通用するようなバッターがいないというのも事実です。
そもそも日本人が打者としてメジャーで戦うには、スラッガータイプではやや厳しい面があります。やはり求められているのは、イチローのように出塁率の高い1番、2番タイプの打者なのです。
今後は投手だけではなく、メジャーで大暴れするような日本人打者の登場に期待したいものです。