「頭痛持ちのため市販の鎮痛薬で抑えていたが、最近、薬が効かなくなってきた」──。実は薬剤使用過多による「薬物乱用頭痛」かもしれない。今、鎮痛薬の飲み過ぎによる頭痛が増加傾向にあるという。
頭痛薬を過剰に常用していると、頭痛が慢性化してしまう恐れがあるのだ。特に週に2、3日以上の服用を3カ月以上続けると発症しやすいと言われている。
特徴としては、特定の部位にではなく、頭全体にズキンズキンと拍動性の痛みが起こることにある。1カ月に15回以上頭痛の症状が出ると薬に対する耐性ができて、同じ量では効果が得られなくなる。この「薬物乱用頭痛」は、ごくわずかな身体的・精神的ストレスで頻繁に発症する。無力感や悪心、そわそわする、記憶障害、集中困難、ウツ傾向との関係性も指摘されている。
原因は、市販の非ステロイド系消炎鎮痛薬による副作用説が。鎮痛薬は、脳幹から快楽物質のドーパミンを放出することで、発作時の痛みをやわらげる。しかし飲み過ぎるとドーパミンが過剰に放出されてしまい、薬が効かなくなるのだ。そのため、薬を服用しないと落ち着かない、不安になる症状も発症する。
市販の鎮痛薬の大部分には、カフェインが含まれていることが多い。これは、即効性の鎮痛作用がある一方で、依存につながりやすい側面もある。市販の総合感冒薬にも、この成分は含まれている。こちらも長期間飲み続けると「薬物乱用頭痛」を発症する可能性があるので、注意が必要だ。医療機関で処方された鎮痛薬もまた、指示された方法と違う飲み方をすると、同様の危険がある。
長期間の薬の服用は、何らかのリスクにつながる恐れがあり、症状が改善しない場合はさらなる薬に頼るのではなく、必ず医療機関に相談することをお勧めしたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。