日本は美しい風景と四季に満ちた国である。川のせせらぎや湖の雄大さ、そして滝の静謐さの中にも妖艶な瞬間が潜んでいた─。
30歳になったばかりの小柳ルミ子が初脱ぎを見せたのが「白蛇抄」(83年、東映)だ。老住職(若山富三郎)の後妻となり、その息子(杉本哲太)とも関係を持つ。不能な設定の若山に秘部を愛撫されたり、若さが暴走する杉本に激しく突かれたりと見せ場は満載だが、小柳は本誌に貴重なエピソードを明かしてくれている。
「この撮影をやってから、どんなロケも苦にならなくなった。それほど京都の夏は暑いし、山のシーンが多かったから虫は出るし。何よりも滝壺に着物のまま入る場面ですね。夏でも凍りつくほど寒くて、心臓が止まるかと思ったくらい」
それでも、水に浸かって月に映える姿は、まさしく〈白い蛇の化身〉のごとく悩ましかった。小柳は本作で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を射止めている。
現在は高橋惠子だが、往年のファンには「関根恵子」のほうがグッとくるだろう。デビューから所属していた大映を離れ、フリーとなって初めて出演した映画が「朝やけの詩」(73年、東宝)だが、12年にはこんな秘話を本誌に教えてくれている。
高橋によると、各地をロケしていったが、湖に服を脱いだ姿で入っていくシーンは長野の明神池だったという。
「ところが、ここを管轄する環境庁からクレームがついて、場所を青木湖に変えて撮り直しになりました」(高橋)
抗議の理由は「自然公園法違反」である。関根が森の中を歩き、突如、生まれたままの姿になって湖に飛び込む。全脱ぎ姿に対しての警告であるが、同時にあまりにも湖の透明度が高く、「ヘア」が映ってしまっての撮り直しでもあったそうだ。
主演女優賞の常連である原田美枝子は、多くの作品でベッドシーンを披露している。萩原健一主演の「もどり川」(83年、東宝東和)では、詩人である萩原と心中する既婚者の役である。
雨の中、心中するために川の上で小舟に乗った萩原と原田。その前にお互い服を脱いだ姿となり、この世の別れを惜しむようにまぐわう。原田の豊かな肢体が小舟の上で跳ねるが、雨の降る夜という悪条件なため、見づらいのが難点ではある。
清水美沙は、今村昌平監督の「赤い橋の下のぬるい水」(01年、日活)で、サエコという特異な女性に扮した。
サエコは体の中に水がたまる体質で、どうやって水分を体外に出すか…それは性の営みしかない、という幻想的な設定である。
役所広司扮する失業者・笹山がその相手となり、サエコの体に水がたまるたび、赤い橋の下の家へ駆けつける。そして激しい営みにより、サエコの股の間からあふれ出る水、水、水…。家から流れ出し、川へと注がれるという、今村流の「奇想天外」な艶シーンであった。
脱ぎっぷりのよさと美ヒップに定評のある丸純子は、「老人の恋 紙の力士」(10年、レジェンド・ピクチャーズ)に出演。主演のミッキー・カーチスの妄想の中で、若い男と冷えきった川の中で熱い抱擁を重ねるシーンに挑戦。自慢の美ヒップは水中に隠れているものの、若々しさをキープするバストは存分に見て取れる。
最後は、伝説の美少女だった遠山景織子の名場面を。ドラマの公表を受けて映画化された「高校教師」(93年、東宝)でヒロインを演じたが、プールに飛び込むシーンでは、17歳にして一糸まとわぬ姿を披露。5年前に本誌インタビューで当時の覚悟を語っている。
「ヒロインの繭と先生の心があそこでひとつになる大事なシーンなんです。台本を読んで、ここで脱ぐことはなくてはならないと感じていたので、抵抗はありませんでした」
水が招き寄せる魔法であったのか…。