冬の風物詩の一つ、中山競馬場で行われる有馬記念は、そのコース形態や距離から予想を難しくし、過去にも多くの大波乱が起きている。ファンの間では「内枠有利」「中山の実績馬を狙え」が定説化しているが──。
オレは中山が好きじゃなかったね(笑)。やっぱ、ちょっとトリッキーやから。そのうえ小回りで3、4コーナーがキツくて、外を回りたくねえし、内を狙うと詰まる(苦笑)。
ただ、有馬は外回りコースからのスタートやから、枠順というよりペースが難しいんよ。早く位置が決まると、すごくスローになることもあるしね。馬や騎手のちょっとした動きやったり、何かの拍子でペースが変わってしまって読みにくい。どこかで馬群が一塊になることが多いのも特徴の一つやね。
やっぱ中山は、自分のペースを崩したら最後が厳しいというか、難しい競馬場やと思う。東京なら馬に力があれば直線までじっとしておればええんやけどな。
「枠順よりペース」を象徴する好例が、安藤勝騎手が騎乗して07年2着、08年に優勝を飾ったダイワスカーレット。ともに上がり3ハロンが36秒4。前半3ハロンも35秒4と35秒6だったように、ほぼ同じラップを刻みながら、08年のレースタイムは07年より2秒1も速かった。
よう覚えてるわ。初めて中山で重賞を勝ったレースやしね。正直、08年は自信があった(笑)。あの年の天皇賞・秋(ウオッカのハナ差2着)は、休み明けでテンションがひどく高くて、自分でも納得いかん負け方をしたから、有馬はもう絶対にぶっ放して行こうって決めてた。スカーレットは中途半端な小細工せんでも勝てるだけの能力を持ってたしな。
逆に07年は全然自信なかったんよ。あまり行きたくねえし(4枠7番から2番手追走)、まだ3歳やったし。「距離、長げえんじゃねえか」とか「最後の坂は苦しいんじゃねえか」とか、こっちが自信なく乗ってたら、すぐ後ろにいたマツリダゴッホに差された。まあ、枠順うんぬんよりも、その馬に合った流れになるかどうかが大切やろね。
そういう意味で今年のメンバーを見ると、スカーレットのように後ろにいる馬の脚をなし崩しにできる逃げ馬がいねえし、早く動きたくねえ馬ばっかりやから、ペースが速くなる感じはしねえよな。
となると、オルフェやゴールドシップが後ろから行くだけに、同じような脚質の馬は厳しそうやね。アドマイヤラクティは、長い距離は合ってて確実に来るけど、ジリっぽくて瞬発力勝負は厳しいやろう。オールカマーで外からまくったヴェルデグリーンも強ええ勝ち方だったし中山向きやけど、瞬発力じゃあ、オルフェには勝てねえと思う。それなら、前にいる馬のほうが穴っぽいやろね。
◆アサヒ芸能12/17発売(12/26号)より