貫録の大補強で、いよいよ巨人は弱点と思われた二遊間も盤石にしたかのようである。ところが、露骨な“評価格差”を巡って、早くも火種がくすぶり始めている。かつて、“オレ流GM”に牙を剥いたあのバクダン男の取り扱いによっては、チームの内部から暴発の危険が‥‥。
「来年はあらゆる補強をして勝つ!」
日本シリーズ敗退後、渡辺恒雄球団会長はこう気勢を上げた。
圧倒的な力でセ・リーグを連覇した巨人だが、固定できなかった二塁手だけは唯一の弱点と言われてきた。
巨人番記者が言う。
「二塁手は寺内崇幸(30)、藤村大介(24)、脇谷亮太(32)、中井大介(24)らがしのぎを削って競ってきただけに、中日を自由契約になった井端弘和(38)と、FA宣言した西武・片岡治大(30)を獲得するや、チーム内からは『何を考えてるんだ!』とあからさまに反対する声が上がりました。さる年配OBは生え抜きの冷遇措置と捉え、『原は適材適所をわかってない』と怒っていました」
二遊間の大補強により、巨人はますます盤石になったかに見える。とはいえ、この2人には入団経緯でかなりの“待遇格差”が生まれている。自由契約で“拾ってもらった”井端とFA宣言で“入団していただいた”片岡という立場の違いから、それぞれの年俸も推定で単年4500万円プラス出来高、2年総額3億5000万円と大きく開いている。そして、それ以上に、入団会見の光景は露骨なまでに「片岡優遇」だった。
12月3日、井端の入団会見は、球団事務所で1人きりで行われた。一方、9日に都内のホテルで会見を開いた片岡の隣には、原辰徳監督(55)の姿まであったのだ。
「まるで原監督が片岡を“後継者”に指名するかのような背番号『8』の継承式でした。監督は大竹寛(30)の時にも入団会見に出席しています。どちらもFA移籍組ですが、井端にも“格”というものがある。球団内からも『あんまりではないか』という声が聞こえてきました」(球団関係者)
さらに井端をブチギレさせたのが、交渉過程における口説き文句だった。
「初交渉を終えた際、片岡は『セカンドのポジションを空けて待っていると言われました』と公表してしまった。のちに原沢球団代表が慌てて、『正二塁手を期待しているという意味です』と訂正したが、実は、井端との交渉ではあくまで『横一線』『競争』と伝えていたんです。片岡の発言で、ハナから“補欠扱い”だったことを知り、井端は『何だよ!』と吐き捨てていました」(球団関係者)
早くも不穏な空気が漂い始めているが、井端といえば、あの落合博満GM(60)の大幅年俸ダウン提示に怒り心頭で中日を飛び出してきたほど気性の激しい男である。
大補強の“内幕”について球界関係者が解説する。
「原監督が片岡の実力を買っているのは有名ですが、今回の争奪戦には気合いが入っていた。実は、井端を放出した中日が片岡獲りに参戦する動きがあったんです。それを察知したのが西武の伊原監督。西武としては、人的補償選手を獲る意味でも、チームを出て行く可能性が高いのであれば、ラインのある原監督に情報を流したほうがいい。巨人とすれば、戦力補強というより、中日が強化されるのを防ぎたかった」
結果的に中日は手を引いたが、その引き換えに巨人は井端VS片岡という時限バクダンを抱えてしまったのである。