メディアでも話題になっている「大人の発達障害」。発達障害は子供の成長過程で生じるものと思われてきたが、大人になってから診断される場合も多い。これまで見過ごしてきた失敗やトラブルも、もしかしたら「大人の発達障害」が原因かもしれない。
「発達障害」とは、先天的な脳の機能の偏りにより、コミュニケーションや対人関係の社会生活に困難が生じる障害の総称だ。代表的な疾患に「ADHD(注意欠如・多動症)」「ASD(自閉症スペクトラム症)」「SLD(限局性学習障害)」がある。
まず「ADHD」は「仕事の間違いやミスが多い」「気が散りやすい」「片づけが苦手」「忘れ物や失くし物が多い」「他者と衝突しやすい」などの特徴がある。特にサラリーマンで「仕事のミスが続いて、心療内科を受診したところADHDと診断された」といったケースもよく耳にするようになった。次は「ASD」。「臨機応変の対応が苦手」「空気が読めないと言われる」「友達ができず孤立しがち」「好きなことには詳しいが、その他のことには知識・常識がない」などの特徴が。また「SLD」は読む、書く、算数の分野で理解や習得が著しく困難とされる。
ここにきて大人になってから発達障害が発覚するケースが増えたのは、周囲の環境や人間関係にカバーされて見過ごされてきたことが考えられている。例えば、多少コミュニケーションが苦手でも、勉強ができれば「個性」として評価されてきたし、親や先生がフォローしていた場合もある。ところが社会人になると高度で複雑なコミュニケーションを必要とされることが増えて、潜在的にあった特性が表面化し、社会生活が困難になるケースが多いのだ。
心療内科や精神科でも正しく診断できるわけではないのが難しいところ。気になる人は、最寄りの「発達障害者支援センター」に相談を。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。