春先になると手のひらの皮が剥けたり、足の裏に細かい水泡ができる人がいる。この症状は皮膚疾患の汗疱(かんぽう)かもしれない。
この病気は、汗が皮膚の中で詰まってしまうことで発症する。大量に汗をかいたり、温度差で急に汗が引いたりすると、皮膚の表面にうまく出られずに中にたまってしまうからだ。
「汗疱」は指、手のひらや足の土踏まずにまで拡大していく場合もある。かゆみを生じる人もいるが、痛みもかゆみもまったくない人も少なくない。「水虫」と間違えやすいが、「汗疱」は、小さな水疱が皮膚の奥から発生し、皮がめくれ、日焼けの痕のように薄皮が剥けていく。
この病気は原因不明のため、根治は難しい。皮膚科を受診しても、ステロイドの塗り薬などでかゆみをコントロールするくらいしかない。自然に症状が落ち着いてくることを待つよりほかないのだ。
もし、手や足裏にできた水泡が、膿を持ったように白く濁っていたら掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の可能性が高い。
小さな膿を伴う水ぶくれ(膿疱)が発症し、しばらくすると茶色っぽいかさぶたになり、皮と一緒に破れ落ちる。繰り返し発症し、発疹の周辺には赤みを帯びてくるのが特徴だ。こちらも原因は不明だが、関節炎を併発することもあり、特に喫煙者に多く見られる。
他に手のひらが剥ける皮膚疾患で多いのが「接触性皮膚炎」。カバン、ゴルフクラブ、車のハンドルなど、手のひらに強く触れるものにかぶれ、皮が剥けることがある。この場合はかゆみを伴うことが多い。
いずれも注意してほしいのは、手のひらの皮が剥けても決してむしってはいけない。尿素のハンドクリームなどで皮膚を柔軟に保ち、洗剤などの外的刺激を避けることがポイントだ。特に季節の変わり目に多く発症するので、気になる場合は皮膚科を受診しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。