20代の頃も8年間ほど、フランスと日本を行き来する海外生活を送っていた女優・中谷美紀。私生活ではそれなりの紆余曲折も味わっている。ベテランの女性誌編集者が言う。
「映画の宣伝を兼ねてコラムニストの辛酸なめ子さんがインタビューしていましたが『デビューの頃はクールな美少女でいらしたのが大人になってフレンドリーで謙虚な雰囲気に。でも美しさは変わらず』とあった。まさにそのとおりで、昔は今と別人のようでしたからね。20代前半なんて取材者泣かせの気分屋だったし、お酒は『飲んでも主人とワイン1本』と話していたけど、昔は新宿2丁目界隈を飲み歩き、同姓好き疑惑や有名アーティストとの不貞疑惑が流れたほどでした」
22歳の時に出演した映画「リング」(98年、東宝)や、00年の映画「カオス」(タキコーポレーション)ではDカップを120回もバウンドさせる激走シーンが話題となったが、女優としての評価が高まったのは30歳を過ぎての遅咲きだった。
映画パーソナリティーの津島令子氏が解説する。
「美貌が際立ち『何をやっても中谷美紀』と言われた彼女の評価が一変したのが、06年の映画『嫌われ松子の一生』(東宝)でした」
教師から性サービス浴場の泡姫に転落し、ヒモ男を殺すという壮絶なヒロインを演じ、その年の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。コメディータッチの演技が高い評判を呼んだ。
そして日曜劇場「JIN─仁─」(09年、TBS系)で、幕末にタイムスリップした主人公の恋人役と、その彼女にウリ二つの花魁役を好演。中谷の人気は一気に全国区となった。
「花魁役はまさに秀逸でした。立ち居振る舞いの所作や妖艶さばかりでなく、軽やかな生きざまを見事に演じ、見ている側を魅了しましたね」(津島氏)
20代後半から日本舞踊や茶道を学び、役柄のために韓国語や関西弁、三味線を習得。06年の映画「LOFTロフト」(ファントム・フィルム)では嫌いなタバコを吸い、「嫌われ─」ではヒップパッドが不要になるほど太るなど、徹底した役作りに励んだ。
「彼女の変貌は演技力だけではなく、周囲への気遣いもすごい。『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)で、徳井に春画本をプレゼントしていたように、スタッフや報道陣に対しても同じ。結婚発表の会見では洋菓子を配り、品物だけでなく礼状も欠かさない。それがまた能筆なんです。20代前半の頃はハンカチすら持っておらず、女性らしさとは皆無。あの頃がウソみたいです」(女性誌編集者)
春画のみならず、日本の文化にも詳しいだけに「国際派女優」としての活躍にも期待がかかる。芸能ジャーナリストの佐々木博之氏は、こう締めくくった。
「5カ国の合作ですが、世界の坂本龍一が音楽を担当した映画『シルク』(08年、アスミック・エース)にも出演していますからね。著書の中で巨匠ヴィム・ヴェンダースの名作『ベルリン・天使の詩』のテーマ曲のビオラのパートがご主人の演奏だったことも明かしていますし、夫婦でステキな映画に携わるなんてこともありそうです」
日本文化を愛する和美人が、春画を片手に世界を駆け回る日は近いかも─。