元モーニング娘。の後藤真希の弟として知られ、アイドルグループ「EE JUMP」のユウキとして活躍した後藤祐樹。芸能界を引退後、銅線泥棒を行ったとして実刑判決を受けた。およそ4年半に及ぶ刑務所生活を振り返る。
「今でもアラームをかけていないのに、6時40分ちょうどに起きることがあります。それだけ体に染みついているんでしょうね」
その穏やかな言葉遣いは、強盗傷害事件で有罪判決を受けた前科者とは思えない。求刑8年に対し、懲役5年6月の実刑判決が下されたのは、08年5月のことだった。
「銅線泥棒を行った際、いつの間にか自分がガードマンを殴ったかのように仕立てあげられてしまったんです。とはいえ、自分が仲間たちを誘ったのは事実。罰を受けるべきだと思って控訴はしませんでした」
分類センターを経て服役したのは川越少年刑務所。21歳だった。
「受刑者の序列は刑務所に入った順番がすべて。年齢は関係なく、先に入った人間が偉いんです。意地の悪い先輩というのはどこの集団にもいるもので、カブトムシの幼虫を食べるよう言われたり、ご飯に体液をかけられたこともあります。部屋長と言われる舎房でいちばん偉い人が指示を出して、男性受刑者2人にマッパで変な体勢を取るよう強要するのを見ました。看守が来ないか見張りを立てるのも忘れない。刑務所でのイジメは悪質で陰湿なものばかりでしたね」
のちに上梓した「懺悔 ゴマキの弟と呼ばれて」(大洋図書)でも書けなかったのが「水飲み」と呼ばれる凄惨なイジメだった。
「川越の冬はとてつもなく寒い。しかも壁はコンクリートがむき出しの状態で、凍傷にかかった耳は、水ぶくれができて血まみれになるほど。そんな真冬の時期、就寝前に1.5リットルのやかんに水道水を満タンに入れて、ひたすら飲まされるんです。部屋長が『いいよ』と言うまで、もどしても飲んで、飲んでもどしてを繰り返す。自分が標的になった際は、10杯も飲まされました。単純計算で15リットルですよ。凍える寒さの中で、大量の水を飲むと身体の震えが止まらなくなるんです。川越ではこのイジメが横行していて、事件送致になったケースでは、被害者がポリタンクで20リットルも飲まされたうえに暴行を受け、翌朝、意識不明の状態に陥っていたと聞いています」
壮絶な獄中生活を振り返った後藤祐樹。12年に仮釈放を迎え、現在は妻、愛犬5匹と暮らしている。SNSを通じて持ち込まれた、受刑者の親族からの相談に乗ることもあるという。