ソチ五輪まで1カ月を切った。国民が期待するのは浅田真央の悲願の金メダル獲得だ。ところが、またしても隣国の銀盤の女王が立ちはだかろうとしている。五輪直前の大会で、ケガが“ウソ”だったのではないかと思わせる“高得点”を叩き出したのだ。その演技を総点検すると、やっぱり“ウソ”だった。足のケガではなく、「採点」のほうが‥‥。
「全体的には満足している。ソチまでには体力面と技術面の課題に取り組む」
1月5日、前回のバンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナ(23)は、韓国選手権で優勝し、冒頭のように語った。まるで、体力面と技術面以外に、自分には死角がないかのような口ぶりではないか。
ただ、キム・ヨナが自信を深めるのも無理はない。この韓国選手権での得点が尋常ではないのだ。
ショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)の総合得点が227.86点である。これは、前回五輪でキム・ヨナが樹立し、現在も破られていない女子世界最高得点(228.56点)と0.7点の僅差。しかも、SPだけ比較すれば、韓国選手権では80.60点という世界最高得点(78.50点)を軽々と抜いている。もちろん、キム・ヨナの今回の点数は国際大会における得点ではない。あくまで、“韓国国内”大会での参考記録だ。
とはいえ、参考と付いても記録として残してもらっては困る事情が日本にはある。我らの浅田真央(23)がいまだ達成したことがない領域の高得点だからだ。
浅田の今季最高得点は207.59点。今回のキム・ヨナは「ホームの利」を生かした得点だが、浅田が今季最高得点を叩き出したのは昨年11月のNHK杯だった。ホームという点では同じである。NHK杯はGPシリーズの国際大会であり、出場選手のレベルは韓国選手権とは比べるべくもないが、20点という点差は看過できない。
そこで、本当に今回のキム・ヨナの演技が高得点に見合うものだったのかを総点検することにした。
スポーツライターの折山淑美氏はこう評する。
「映像で見るかぎり、キム・ヨナのSPの演技は、ほぼ完璧と言えるでしょう。特に、ジャンプで回転に余裕を持って着氷している点はみごとでした」
また、キム・ヨナのFSの演技を映像で見たという元五輪代表の渡部絵美氏はこう話す。
「最初のコンビネーションジャンプで飛んだトリプルルッツは、すばらしい出来映えでした。ケガで試合から離れていても、一度、身についた技術は人を裏切らないものだなと実感しました」
ということは、あの高得点に納得しているということなのか。しかし、渡部氏はこう続けるのだ。
「酷な言い方になりますが、バンクーバー五輪と比較してしまうと‥‥。やはり、ベテランらしく『無難にまとめてきたな』と思ってしまいますね」
そして、前出・折山氏はこう畳みかける。
「昨季のルール変更で、演技後半のジャンプに高い点がつくようになるなど、最近は点数が出やすくなっているのですが、今季は昨季と比べても、異常に点数がついている。中でも、このキム・ヨナの点数は突出していて、過剰な加点があると言わざるをえません」
やはり、この高得点は“怪しすぎる”ということか。
◆アサヒ芸能1/14発売(1/23号)より